BUTAKOME編集部

【レビューレポート】『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』SPECIAL SHOW ▷時を超えてオリジナル・ヘドウィグが日本に降り立った奇跡

2017/10/18


 
ヘドウィグSS1018

ジョン・キャメロン・ミッチェル(ヘドウィグ/写真右)、中村 中(イツァーク)
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』SPECIAL SHOWより

 
東京公演の3日間、東急シアターオーブに通い詰めた『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』SPECIAL SHOW。ニューヨークのドラァグクイーンのクラブで産声を上げたのが1994年。オフブロードウェイの初演が1998年。映画版上演が2001年。初演から実に20年以上の時を経て、作品の生みの親であるジョン・キャメロン・ミッチェルさんが日本に降臨した奇跡を客席から手に汗を握るように見つめた日々を振り返り、SPECIAL SHOWをレポートします!

 

ヘドウィグ・パワーが東京を席巻した熱狂の3日間

 
ベルリンの壁が崩壊するアニメーションの真ん中に、マントを広げたヘドウィグが登場した! 

このときから新たな『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』SPECIAL SHOWが始まった。
 
「私は新しいベルリンの壁」と叫ぶヘドウィグの、ベルリンの壁を象徴するマントは映画でも日本上演版でもお馴染みのシーン。しかし、2014年にブロードウェイで上演されたマイケル・メイヤーさん演出版ではこのマントが登場しなかったのだ。個人的には、「西と東、隷従と自由、男と女という境界線を越えた存在」であるヘドウィグを視覚的に見せるためにもっとも必要なものと思っていたので、マント復活を見ただけで心は駆り立てられた(そして、マントの背中には「HELLO TOKYO」の文字も!)。何よりもジョンさんのパフォーマンスのパワーは圧倒的だった。引き裂かれた思いを歌う「Tear Me Down」のナンバーから客席を熱狂の渦に巻き込んだ。

 
今回は日本で上演されるために用意されたSPECIAL SHOW。ヘドウィグに付き従うイツァークを中村 中さんが日本語で演じる。

ジョンさんは日本語で「ワタシのオット」「ワタシのシモベ」とイツァークを紹介。
そして、「お前は本当につまらない! そうだ、今日は……」とかつらをかぶせ「日本のヘドウィグのパペット!」とヘドウィグの物語をイツァークが日本語で演じるように促す。
こうして、中村さんが日本語で語り、英語での歌をジョンさんが歌う、いわば「二人一役」の形でヘドウィグを演じるという意表を突いた展開に。
 

ヘドウィグSS1018

ジョン・キャメロン・ミッチェル(ヘドウィグ/写真右)、中村 中(イツァーク)
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』SPECIAL SHOWより

 
この展開には驚いた方も多かったと思う。私も初めは戸惑いがあった。ただ、以前ジョンさんにインタビューした際、

「ヘドウィグは演じる役者を選ばないと思うんだ。人種も性別も選ばない。ある種歌舞伎のように、仮面をかぶって演じるものだから、誰だってヘドウィグになれる。そういうキャラクターだと思う」

「僕は作品をマイクロマネジメントするつもりはないんだ。ギリシャ神話にしてもシェイクスピア作品にしても、名作はそれぞれの解釈の余地を与えるし、呼吸するものだと思うので。サンフランシスコでは10人のヘドウィグが登場したり、ブラジルでは2人のヘドウィグが登場してそのうち1人がトミーを兼ねていた。そういうヘドウィグもありかなと思う」
 
と楽しそうに答えていたのを思い出すと、ジョンさんはこの変化球な展開も興味深く受け止めてくれたのではないかと推察する。

 
演じ手と歌い手が別れるというのは、日本の文楽を思わせる演出でもあり、あるいはク・ナウカのムーバーとスピーカーが別れる手法も連想させられる。西洋演劇の演じ手であるジョンさんが果敢にこの演出に挑戦されたことに対しても敬意を表したい。

また、コンサート形式で『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のナンバーを単体でランダムに歌うのでなく、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の物語として演じながら歌うことで、ジョンさんのヘドウィグがよりリアルに息づいたと思うのだ。中村さんの語りと見事にシンクロして、ジョンさんの歌が世界を広げる。心揺さぶられる瞬間だった。

 
実際、楽曲の一つ一つが粒立っていた。「The Origin of Love」の自分の片割れを求める切ない思い、「The Angry Inch」の激しさ。「Wig in a Box」ではジョンさんが「一緒に歌おう、そこに英語歌詞が出るから」とスクリーンを指し示し、「Put on some make-up」と歌詞を先に言ってくれて、日本の観客とのsing along(一緒に歌う)を楽しんだ。

 
ジョンさんと日本の観客との架け橋の役割を果たす中村さんはヘドウィグを演じるだけでなく、時にはヘドウィグの母やルーサー、トミーも演じてみせた。何より「オリジナル・ヘドウィグ」のジョンさんの前でヘドウィグを演じるというのはとてつもないプレッシャーがあったに違いない。中村さんが恐ろしいほどの覚悟と決意を持って演じていたのが感じられた。

 

<次のページ>
ジョンのヘドウィグの思いが客席と共振する

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■
 

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作:ジョン・キャメロン・ミッチェル
作詞・作曲:スティーヴン・トラスク
演出:ヨリコ ジュン
音楽監督:岩崎太整

CAST
ヘドウィグ / ジョン・キャメロン・ミッチェル
イツァーク / 中村 中

 

【東京公演】

会場:東急シアターオーブ
日程:10月13日(金)19:00、14日(土)13:00・19:00、10月15日(日)16:00
料金:S席 9,500円 / A席 8,500円

※日本語・英語上演 日本語字幕あり
※開場時間は開演の1時間前 
※未就学児入場不可

お問い合わせ:サンライズプロモーション東京 TEL0570-00-3337(毎日10:00〜18:00)
       

【大阪公演】

会場:NHK大阪ホール
日程:10月17日(火)19:00
料金:全席指定 9,800円

※日本語・英語上演 日本語字幕あり
※開場時間は開演の30分前 
※未就学児入場不可

 

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』SPECIAL SHOW公式サイト

 

 

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

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【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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