落語「J亭」

広瀬和生の「J亭を聴いた」(平成21年10月分)<5>

2009/12/03


お待たせしました。
10月30日(金)に開催されました「四季 秋 part II」のお話です。

立川談笑『山号寺号』

103101 上野広小路で若旦那とバッタリ会った幇間の一八。「若旦那、どちらへお出かけで?」「うるさいな、浅草の漢音様だよ」「イヨッ! 金龍山浅草寺にご参詣!」「違うよ、浅草だよ」「ですから金龍山浅草寺」「何で山へ行かなきゃいけないんだよ!」「えっ、ご冗弾をあれは、拝むのは観音様でも、場所は金龍山浅草寺でしょ。山号寺号ってヤツで」「何だ山号寺号って」「成田山新勝寺とか東叡山寛栄寺、身延山久遠寺と、どこにでもある」

 「どこにでも? 言ったな!」 自分の無知を幇間に突かれてカチンと来た若旦那、「ここにもあるんだな」とムキになる。「いえ、寺があればっていう」「いやいや、オマエは『どこにでも』って言った! さあ探せ山号寺号を。あれば祝儀に一円やる。無けりゃ出入り止め!」「んな、無茶な!」「これからは口の利き方に気を付けるんだな」と立ち去ろうとする若旦那にすがりついた一八、「ちょ、ちょっと! あそこに車屋が! 車屋さん広小路、ってのはどうです?」とダジャレで返す。

 一円せしめた一八、調子に乗って「またあったら一円ずつくださいよ」と言って、「日本共産レッドパージ」だの「足長おじさん交通遺児」だのダジャレで一円ずつ稼ぐ。「あ、子供の乞食だ。一家離散、生き恥」「可哀そうだな、一円はこの子にやろう」「南無三、仕損じ」「それはサゲだろ!」(笑)

 その後も歩きながら観るもの総てに引っ掛けて「グルタミン酸、隠し味」等々ダジャレを連発、とうとう若旦那の財布は空っぽに。「じゃあ、今度は俺の番だ」と若旦那は一八の財布を預かり「おおいい財布だな」と懐にしまうと「一目散、随徳寺」と走り去る。「あっ! みんなご破算、大赤字!」

立川談笑『山号寺号』(「J亭 談笑落語会 四季『秋』Part 2」より)

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柳家喬太郎『吉田御殿』

103102 暑い夏の盛り、峠の茶屋に辿り着いた若侍、中村新之助。汗で全身びっしょりなので、茶屋の主人が「お召し物を洗いましょう」と気を利かせてくれる。「そうか、では遠慮なく」 と、新之助は見晴らしの良い場所で越中フンドシの横からイチモツを取り出して気持よく立小便を。途端に血相を変えて飛んでくる茶屋の主人。「厠はあちらに…!」「いや、何となくここでしたら気持よかろうという気になっての。いけなかったか?」「いえ…何故か皆さんそこでしたくなるのですな…そんなことを言っている場合ではない、今すぐお発ち下さい!」「しかし、まだ着物が濡れて…」「いえ! 今すぐお発ちに! でないと女中が! 早く早く!」

 うろたえた主人の様子は明らかに異常だ。と、そこにどこからか現れた女性。「旅のかたですね? お急ぎでなければ、ぜひ我が家でご休息くださいと、わが主…この先の吉田御殿の女主人が申しております」 急ぐ旅でなし、宿も決めていない新之助は言われるがままに吉田御殿という広い屋敷へ。恐怖におののきながら後姿を見送る茶店の主人、「ううう…南無三、仕損じ」(笑)

 吉田御殿の女主人は「淀どの」と呼ばれる、実に色っぽい妙齢の美女。新之助は風呂を勧められ、湯上りには二人並んでの夕餉の膳。外はにわかに天候が悪化し、激しい雨…やがて雷が。「怖い!」と抱きついてくる淀どの。その鎖骨のなまめかしいこと! うなじの白さ、そしてあらわになった太もも…「ああ…新之助様…」と寄り添ってくる美女、思わず抱きしめた新之助。

「落語ではこの先は『破れていて読めない』とか言うものですが…今日はやるんです!」ということで、若い二人はくんずほぐれつ、もうヒィヒィ、キャアキャア、三日三晩ヤリ通し。夜中になり、さすがに身体がもたないと逃げようとする新之助。だが見つかってしまった! 逃げられない新之助。「離しません、新さま…」

 さらに淫行にふけり続ける二人の身に起こる悲劇。果たして淀どのの正体とは…? エロ全開のこの噺、新作ではなくれっきとした古典である。

柳家喬太郎『吉田御殿』(「J亭 談笑落語会 四季『秋』Part 2」より)

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立川談笑『抜け雀』

 宿場で客引きをする男。「お泊りではございませんか?」と声を掛けた相手は「シッ!」と宿の男を制して地面を見ている。「見てみろ、蟻だ…この動き、この小ささでこれだけ精緻に…ん? 何だその方は?」「お泊りでは?」「ああ、泊めてくれ」「金はお持ちで?」「持ってる持ってる…泊まれるほどには。宿はひと月ぶりか…おお見ろ、蝶だ! かようなものにも生が…」

 一文無しばかり引き込む間抜けな宿の主人が、また汚い男を連れてきたので女房「何であんな乞食みたいなのを!」と怒る。汚くて臭い旅人は意に介さず「みすぼらしい宿だな。かようなところに泊まるのは貧乏人であろう。ん? 酒? いや、無ければ飲まないし、有れば飲む」

「ちょっと、二階の乞食もう二十日も居るよ!」と女房が怒る。「金持ってないわよ!」「その事実を知るのが怖い」「毎日、あの人と一緒に出歩いて何やってるのよ!」「オマエがわかってないんだよ、毎日キリキリ生きるだけが人生じゃない。何でもちゃんと見ると美しいんだ。この国、この宿場、美しいな…ホラ、夕日が!」と涙ぐむ主人。「あの人、万が一お金持ってなくても、いい人なんだよ」

 結局、旅人は文無しだった。職業は絵師。宿代の代わりに絵を描くという。「硯を…筆は要らん」 絵師は真っ白な衝立に素手で直接なにやら細工を…「絵が出来た、見てみろ。二年ぶりに描いた。会心の出来だ」「え? 何も描いてありませんよ。入ってきた雀がそこに居るだけで」「雀を描いた」「あ! これ、絵ですか!」と触ってみると「ホントだ! 絵だ!」「面白い仕掛けがしてある。宿代の代わりだ。言っておくが、絶対に売っちゃいかんぞ」「なぜ?」「それは、この宿、この場所にあってこそ…まあ、わからんだろう」

 旅人は出て行き、宿の主人と女房は揉めに揉めて夜を過ごす。翌朝、女房が二階の部屋に行くと「雀! 入り込んでる…窓開けなくちゃ。(と開けると)あれ? 外に居るわよね! (窓を閉める)あ、入ってきた! (窓を開けて)ほら出た! (閉めて)ほら消えた!」 日の光が当たると見えなくなり、窓を閉めると生き生きとそこに見える、それが「雀が飛び出る」ように見えるのだ。さあ、この絵はたちまち「抜け雀」と評判になり、この宿は大繁盛……。

 古典落語『抜け雀』の絵師のキャラを大幅に変え、「絵が抜け出る奇跡」に芸術としての合理性を与えた、談笑ならではの改作。通常の古典同様、父親がカゴを描きに来るが、それを息子は感謝することなく「全然わかっちゃいねぇ!」と猛反発し、再登場した父と壮絶な争いを繰り広げることになるのだった。

立川談笑『抜け雀』(「J亭 談笑落語会 四季『秋』Part 2」より)

J亭 うちあげ話 vol/8

秋の第二回目、今日の場所はいつもの新橋から赤坂へ。
「赤坂聳え(そびえ)」という関西ローカルフードの店。土手焼きで飲みたく設定。
字が覚えづらい、書きづらい、ほんというと書けない。
中国語簡体なら「103103」とか。確かに楽ですが少し空虚な感じ。
ここの土手焼きは本場関西の味にオリジナルのブレンド味噌と赤ワインで煮込んで少し違った絶妙の味になってるとのふれこみ。

J社のSさんは関西に長かったので「うまいけど、こんなオシャレやない。土手焼き味とは違う。天王寺動物園界隈のが・・・・自分は基準」とのこと。
でも焼酎飲むのにはかなりいけてるような。
ゲストの喬太郎師匠、都合で打ち上げには参加できず(残念!)。

今回は艶笑噺の「吉田御殿」。寝転がるは腰を動かすはで、度肝を抜かれっぱなし。
その興奮がさめやらぬままの打ち上げは、たったひとつしかない個室。
定員は10名のところに13人。斜め座りが3名。
喬太郎師匠参加していたらどうしたんだろう。くんずほぐれつ「土手焼き御殿」か。

(佐)


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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

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2018/02/14

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

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2016/11/29

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.7 一味違った楽しさとパワ..

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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