落語「J亭」

広瀬和生の「J亭を聴いた」(平成29年4月分)<82>

2017/04/18


一之輔_MG_7209 H4月13日(木)、「J亭落語会 春風亭一之輔独演会」。
演目は以下のとおり。

入船亭辰のこ『織田茶道』
春風亭一之輔『蜘蛛駕籠』
春風亭一之輔『花見の仇討』
~仲入り~
古今亭志ん八『締め込み』
春風亭一之輔『刀屋(おせつ徳三郎・下)』

開口一番の入船亭辰のこは扇辰門下の前座。あと一ヵ月で二ツ目に昇進するということで、一之輔から「新作をやってもいいよ」と言われたとのこと。そんなわけで演じたのは織田無道の弟、織田茶道が「あなたもテレビに出られる霊能者になれる」と謳って主宰する芸能霊能専門学校の噺。

続いて登場した一之輔は、先日放映されたNHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル』の話題から旅の話題へとマクラを振って、街道で客引きをする駕籠屋が次々に失敗する『蜘蛛駕籠』へ。色々な演目で「一之輔独自の演出」を前面に出して爆笑させる一之輔だが、この噺は五代目柳家小さん型のオーソドックスな演り方をほとんど崩さず、それでいて新鮮に楽しめる。落語の「上手さ」というのはこういうところに出てくるのだ、と改めて感心させられた。

一之輔はそのまま高座を降りずに二席目の『花見の仇討』へ。
長屋の四人組が花見の趣向で「巡礼兄弟の仇討ち」の茶番を演じようとしたものの、当日ハプニングの連続で大変なことになる噺で、近年では桃月庵白酒が得意としている印象が強い。一之輔は白酒からこの噺を教わったという。白酒の『花見の仇討』は独特な演出が多々あって、一之輔はその演出を基にしながらさらなるアレンジを加えて完全に「一之輔の噺」にしている。「親のカタキ!」という台詞をうろ覚えの巡礼兄弟(を演じる長屋の男)が「アジのタタキ!」と言い間違え、そこがベースになって「アジの開き!」からついに「アジのなめろう!」と原型をまったくとどめない台詞になってしまうくだりは白酒の「マヤの遺跡!」から「山のマタギ!」になっていく演出を一之輔流にアレンジしたものだが、「アジが好きだな!」と浪人役の男が返すように、「アジ」繋がり、という発想が一之輔らしい。茶番での巡礼兄弟のテキトーさは一之輔ならではの可笑しさ。編み笠が脱げない浪人、疲労困憊する松ちゃん等、白酒のならではの可笑しさが印象的な場面も、一之輔独自の可笑しさを生んでいるのはさすが。ちなみにこの噺、六代目三遊亭圓生、五代目柳家小さんは茶番を提案した男が六十六部役を務めるが、一之輔は白酒と同じく「言い出しっぺの俺が仇役を」とリーダー格の熊さんが浪人に扮するが、これは十代目金原亭馬生の演り方だ。

休憩の後に高座に上がった古今亭志ん八は泥棒噺の『締め込み』を。トボケた新作を聞かせる演者という印象も強いが、古典は正統派で古今亭らしくすっきりと聞かせる。

一之輔の三席目は、大店の一人娘おせつと奉公人の徳三郎がいい仲になって心中を図る『おせつ徳三郎』の後半『刀屋』
花見に行ったおせつと徳三郎の様子を小僧の定吉がバラして徳三郎がクビになる前半は『花見小僧』という滑稽噺になっている。後半の『刀屋』は人情噺風だが、通常の演り方だと心中しようと法華経を唱えて橋から飛び降りた二人が筏の上に落ちて「お題目(材木)のおかげで助かった」というオチ。落語らしくていい、とも言えるけれども、その先の二人の運命が気にかかる。柳家花緑はそれをハッピーエンドにする独自の演出を考案して、実にいい噺にした。一之輔『刀屋』は花緑から教わったもので、飛び降りた二人を見たおせつの父親が「添わせてやればよかった……」と後悔し、下を通りかかった舟に落ちて助かった二人に「一緒にさせてやる」と約束する。橋の上まで刀屋の主人が追いかけてきて、勘当した息子と偶然出くわすというのも花緑の『刀屋』だけの設定だ。滑稽噺二席で笑わせた後、トリネタで「人情噺をダイナミックに演じる一之輔」の魅力を存分に味わわせてくれた今日の構成、実に濃密で聴き応えがあった。

※画像およびテキストの転載を禁止します。

バックナンバー

シルク・ドゥ・ソレイユ『キュリオス』リビング貸切公演

インタビュー

古川雄大091301

古川雄大

『レディ・ベス』ちょっと異質なスペインの風を吹かせたい...

チケット購入

一覧はこちら

BUTAKOME動画チャンネル

連載☆エンタメコラム

2017/09/17

【中井美穂のヅカヅカ行くわよ♪<番外編>】『謎の変奏曲』橋爪功さん×..

open

close

Profile

ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2017/10/12

【尾上松也のエンタメ異文化交流録】『髑髏城の七人』Season風

open

close

Profile

1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2017/10/18NEW

📹【加藤和樹のエンタメCafe No.9】〈銀座エリ..

open

close

Profile

1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

【Official HP】 公式サイト
【Official blog】 公式ブログ

2016/11/29

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.7 一味違った楽しさとパワ..

open

close

Profile

木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

クラシック音楽界のきら星たちに注目

NYから直送!「最新ブロードウェイミュージカルレポート」

ブタコメ編集部

関連サイト

  • LIVING COLLECTION
  • LIVING
  • CITY LIVING
  • あんふぁん
  • シュフモ
  • Lei wedding net