BUTAKOMEステージレビュー<劇場に行かねば!>

【ゲキネバ!】番外編『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

2017/08/31


 

浦井健治・濱田めぐみ

(左より)夜神月 役 浦井健治さん、死神 レム 役 濱田めぐみさん
写真:©National Taichung Theater/阿部高之

 

ステージ雑感「ゲキネバ!」
番外編『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

 
 劇場へ行かねば! 略して「ゲキネバ!」の今回は海外番外編、『デスノート THE MUSICAL』再演の台湾公演です。

 
2015年に初演を迎えた本作は、言わずと知れた人気漫画を原作とした稀少な日本オリジナル・ミュージカル。フランク・ワイルドホーンさん作曲、栗山民也さん演出の舞台で、日本に続けて制作された韓国キャストによる韓国版もおおいに話題になりましたよね。今夏、台湾は台中の地で昨年の秋にオープンしたばかりのオペラハウス、台中国家歌劇院による招聘公演が行われました。台湾と聞いてためらいなく観劇旅行を決めた筆者は、けっして小籠包やマンゴーかき氷やタピオカミルクティーに惑わされたわけではありません! 日本発ミュージカルの海外お披露目の瞬間を見届けなければ! という大きなお世話の使命感により、海を渡ってまずは台北の地に降り立ちました。
 

劇場

美しく区画された地域にある台中国家歌劇院 / 正門外壁にも『デスノート』が!
写真(左):上野紀子

 
 暑いっ! 話に聞いてはいたけど台湾の夏も手強い暑さです。松山空港から台北駅に移動して、“高鐵”という台湾の新幹線で台中へ。1時間もかからずに着いてしまうお手軽さにビックリ。台中国家歌劇院の周辺は美しく区画された地域で、見るからに高級そうなマンションが林立していました。そして歌劇院のユニークな正門外壁に『デスノート』のビジュアルを発見。外柱ポスターも『デスノート』仕様で、歓迎ムード一色です。
 

劇場

台中国家歌劇院の周りは『デスノート』仕様に
写真(中央):上野紀子

 
 まさしくゲキネバ!で、この台中国家歌劇院は、機会があればぜひ訪れていただきたい個性豊かな劇場でした。建築家・伊東豊雄氏の設計による建物内は、天井から壁、柱などがすべて曲線になっているのが特徴。まるで広々とした洞窟をさまよっている感覚です。この中に大劇院、中劇院、小劇院の三つの劇場が入っているほか、セレクトショップやカフェ、屋上庭園などもあって、ふらりと立ち寄る素敵スポットとして現地の人々に親しまれているよう。一階ロビーには、主人公・夜神月(ライト)役の浦井健治さん柿澤勇人さん、そしてL(エル)役の小池徹平さんの等身大スチールが置かれていて、現地の皆さんが楽しそうに記念撮影する様子も見られました。
 

パネル

等身大スチール
写真:上野紀子

 
 そのロビーの奥に、上階へと緩やかなカーブを描いた大階段がありまして、その前には開演前から長~い列が出来ていました。ここが『デスノート』を上演する大劇院への入口で、階段の下でチケットをもぎるシステムなんですね。筆者も、ウキウキと階段を駆け上っていく人々を眺めながら入場。階段から劇場ロビーまでを覆う赤絨毯がゴージャスです。約2000席を有する観客席内部も、シートの形や二階バルコニーに至るまで曲線のイメージで統一されていました。三日間計4回公演の、まずは浦井ライトによる初日公演がいざ開幕です。
 

浦井健治

写真:©National Taichung Theater/阿部高之

 
 死神リュークが退屈ゆえに、わざと人間界に落としたデスノート。名前を書かれた者は死を迎えるというそのノートを拾った夜神月(ライト)は、理想の世界を築くために犯罪者を次々と殺めていく。その歪んだ“正義”に対し、名探偵L(エル)はプロファイリングを駆使して糾弾する……と、おそらく多くの方がご存知の大筋をさらりとご紹介。台湾でも原作漫画は相当な人気のようです。オープニングの40秒カウントダウンの音とともに、客席の興奮のささやき声が静まっていき、グッと集中度が高まるのがわかりました。浦井ライトとアンサンブルの皆さんの厚い歌声に続き、再演から新登場の石井一孝さんのリューク、そして濱田めぐみさんの妖艶なレムのタッグが醸し出す、不穏な空気に強力に惹きつけられて…。
 

石井一孝

死神 リューク 役 石井一孝さん
写真:©National Taichung Theater/阿部高之

 
その後、ライトの父、夜神総一郎(別所哲也さん)と警察チーム、ライトの妹の夜神粧裕(髙橋果鈴さん)、人気アイドルの弥海砂(ミサミサ=唯月ふうかさん)と、たたみ掛けるようにキャラクターが登場するテンポの良さは、初演で知ってはいたけれどあらためて見事な構成と感服しきり。初演以上にシャープな加速度で興奮をあおられたように感じます。とことん前のめりな気持ちにさせた後の、トドメの小池エル登場には、奇妙な快感を覚えるインパクトがありました。この再演、間違いなくグレードアップしている!と確信。

 ステージ上部と、ステージ下部の左右(前方の観客のため)に中国語(台湾華語)字幕が出て、筆者には判読不能ですが、ちゃんと台詞と歌詞を違うフォントで表示していることがわかります。その内容や、字幕操作も非常に優れていたようで、一番人気の石井リュークの言動に、現地の若者から瞬時に歓声や爆笑が沸き起こっていました。海外公演でよく感じる「ここでこの反応が!?」といった意外な驚きは見受けられず(それだけ字幕が正確なニュアンスを伝えていたということでしょうか)、とにかく印象的だったのはリュークに対する熱視線の強さ。石井さんが立ち上げた新しいリューク像にはより劇画調の味わいがあって、前半では愉快に客席を沸かせ、クライマックスに近づくにつれて危険な恐ろしさを増幅させて観客を魅了していました。
 
別所哲也/小池徹平

夜神総一郎 役 別所哲也さん L 役 小池徹平さん
写真:©National Taichung Theater/阿部高之

 
同じく新加入の別所さんは実直でスマートなリーダー&パパ像を作り上げ、髙橋さんは涼やかな歌声とキュートな笑顔が好印象。そして初演からミサミサを担う唯月さんの、爽快なアイドルぶりと深みのある感情表現にも釘付けに。この二年間の活躍から、自信と実力を着実に積んでいることは一目瞭然です。不動の歌姫、濱田さんが繰り出す豊かな情感にもがっぷりと相対する力を見せ、ミサミサ&レムによる美しくせつないクライマックス・シーンをしっかりと心に刻み込んでくれました。このシーンで濱田レムが見せる献身の愛には、胸が締めつけられること必至。台湾の観客もその静謐な美を、息を詰めて見守っていたようでした。
 

唯月ふうか

弥海砂 役 唯月ふうかさん
写真:©National Taichung Theater/阿部高之

 
 小池エルは、初演よりも爆発しているボサボサ頭がより漫画チックで、不気味さと愛らしさの混在した姿がなんとも魅力的。突き抜けるように響く美声の安定感が、逆に妙な胸騒ぎを誘います。そして浦井ライトは今回も、無邪気な笑顔と狂気の叫び、その振り幅の豊かさを存分に見せつけてくれました。端正な立ち姿から繰り出すパワーボイスのギャップにも揺さぶられます。作品を主導する確かな力と華を持った俳優さんであることを、この台湾の地で今更ながら強く感じたのでした。
 

小池徹平

写真:©National Taichung Theater/阿部高之

 
 上演中、たびたび沸き起こる素直な笑い声や歓声は日本での公演よりも際立っていたけれど、集中して見入る雰囲気は日本と同様で、とくに違いはないな…と思っていました。ところがカーテンコールになるや、いきなりの熱狂的な大歓声&オールスタンディングの光景にビックリ! 若い男性の太い声も響いて、さながらコンサート会場のよう……。舞台上で挨拶する俳優さんたちも嬉しそうでしたが、予想以上の反響にたじろいだような笑顔が微笑ましかったです。
 

デスノート台湾公演5

 
 さて公演二日目。柿澤ライトの初日公演を目指してまた歌劇院の洞窟のような建物内を歩いていた時、楽屋口へ入ろうとしている石井さんの姿を発見。素早く取り囲んだのは日本からいらしたファンの方々や、リューク役の俳優さんと気づいて(当然あのメークはしていませんから…)走ってきた現地の方々のよう。その中で、台湾の若い男性が我先にとプログラムを差し出してサインを求め、石井さんに積極的に英語で話しかけていたのが印象的でした。

そして前日と同様に、大階段の前には長蛇の列。その中にはあきらかに前日の公演を観たリピーターらしき人がいて、同じグループの仲間たちに熱心に舞台の説明をしている様子も見られました。上演中も、観客の集中の濃さを感じながら、同時にリラックスした雰囲気もあったのは、やはり二度目の観劇の人が多いからでしょうか。柿澤ライトや小池エル、石井リュークが何かを発するたびに、女の子の「キャッ!」といった小さい悲鳴があがり、仲間同士で何やらヒソヒソおしゃべりするなど大盛り上がり。観劇を心から楽しんでいる様子でした。
 

デスノート

(右)夜神月 役 柿澤勇人さん
写真:©National Taichung Theater/阿部高之

 
 柿澤ライトは、自身が「“新世界の神”になる」と力強く歌い上げながらも、心の奥でつねに人間らしい葛藤を抱え、自らとせめぎあっているような憂いのある存在感に惹かれます。台詞でも歌でも、ドラマを繊細に伝える柿澤さんの声には独特の味わいが。浦井ライトと柿澤ライトの造形がまったく異なり、その両方があって『デスノート』という作品が完成することを、二日連続の観劇で強く感じたのでした。カーテンコールはまたもや大熱狂の嵐で、とくに一階後方席、そして二階席から熱風が送られるように感激の圧を感じたのは、そこが低価格チケット帯で、現地の若い人たちが主に座っていたからでしょう。今回の大劇院公演では、一階席、二階席それぞれ正面席、サイド席、後方席と舞台の見やすさによって7段階の細かい価格設定がされていました。日本の劇場もそれくらい細かく設定してくれたら……と、そこはちょっと羨ましく思ってしまいますね。
 

柿澤勇人

写真:©National Taichung Theater/阿部高之

 
 観劇ついでに(?)マンゴーかき氷もタピオカミルクティーもしっかり味わって、充実の台湾観劇旅行から戻りました。6月末の富山公演から始まった『デスノート』再演は、この台湾公演、大阪公演を経て、いよいよ9月2日から新国立劇場中劇場にて東京公演が始まります。さらに精度を上げた日本オリジナル・ミュージカルの魅力を、ぜひ劇場で体感していただきたいと思います。
 
mango・tapioka

写真:上野紀子

 
 ゲキネバ! まだまだ続きます。次回をお楽しみに~♪

 

写真提供/ホリプロ

 
上野紀子(うえの のりこ)■
プロフィール
演劇ライター。桐朋学園芸術短大演劇科、劇団文学座附属演劇研究所卒。『シアターガイド』『BEST STAGE』など演劇情報誌のほか、公演プログラムにて執筆。韓国演劇に関心を持ち、『シアターガイド』では2004年から韓国演劇情報を約十年に渡り連載した。2008年、文化庁在外研修で一年間ソウルに留学。高麗大学韓国語文化教育センター定期課程修了。韓国演劇を気にかけながらも、現在は日本のステージシーンのほうを注視している。BUTAKOMEイベントで時々MCも頑張ってます♪

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■

デスノート
 
『デスノート THE MUSICAL』

作曲:フランク・ワイルドホーン
演出:栗山民也
出演:浦井健治/柿澤勇人〈Wキャスト〉、小池徹平、唯月ふうか、髙橋果鈴、濱田めぐみ、石井一孝、別所哲也ほか

公演期間:9月2日(土)~9月24日(日)

会場:新国立劇場・中劇場(初台)

料金:
S席1万3000円、A席 6,500円
※未就学児入場不可

※詳細は公式HP

 
 

 

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2017/09/06

【尾上松也のエンタメ異文化交流録】『ヤングフランケンシュタイン』

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2017/03/22

📹【加藤和樹のエンタメCafe No.8】〈池袋エリ..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

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2016/11/29

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.7 一味違った楽しさとパワ..

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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