BUTAKOMEステージレビュー<劇場に行かねば!>

【ゲキネバ!】Vol.8 『プレイヤー』

2017/08/17


 

プレイヤー4

(左より)木場勝己さん、藤原竜也さん、仲村トオルさん、成海璃子さん
撮影:細野晋司

ステージ雑感「ゲキネバ!」
Vol.8 『プレイヤー』

 
劇場へ行かねば! 略して『ゲキネバ!』連載8回目は『プレイヤー』です(8月27日まで東京・シアターコクーン、8月31日~9月5日まで大阪・森ノ宮ピロティホール、9月9日、10日は静岡市民文化会館中ホールにて公演)。
 

作者は劇団イキウメを主宰する前川知大さんで、演出は劇団阿佐ヶ谷スパイダース主宰の長塚圭史さん。ともに劇作、演出を手掛ける精鋭二人がタッグを組んだ本作は、演劇フリーク騒然の話題作として早くから注目されていました。舞台初顔合わせとなる藤原竜也さん仲村トオルさんを筆頭に、成海璃子さんシルビア・グラブさん峯村リエさん高橋努さん安井順平さん村川絵梨さん長井短さん大鶴佐助さん本折最強さとしさん櫻井章喜さん木場勝己さん真飛聖さんの、総勢14人のキャストも期待十分の顔ぶれです。

 
2006年のイキウメ公演『PLAYER』をベースに、前川さんと長塚さんが協議を重ねて新たに生み出したのは、なんとも複雑で奇っ怪な劇空間でした。劇中劇『PLAYER』の世界があり、その劇を上演するカンパニーがあるという入れ子構造で、それぞれの人間関係を交錯させて物語が進んでいくんですね。14人のキャストのうち9人が俳優の役で、つまりその人たちは劇中劇の役柄も同時に担います。その二つともに役名が同じで、劇中劇とカンパニー内で呼び方が変わったりするので(たとえば藤原さんが演じる“桜井道彦”は、劇中劇では“桜井”、カンパニーの俳優である彼は“道彦”と呼ばれます)、観る側も相当の集中力をもって、頭の中を整理しながら追いかけていかねばなりません。そんな“まぎらわしい設定”も、前川&長塚コンビが結託の笑みを浮かべながら(失礼! でも想像すると楽しい)仕掛けた、迷宮の落とし穴なのだろうな…と後になって思うのでした。

 

プレイヤー1

撮影:細野晋司

 
 物語の舞台は、ある地方都市の公共劇場。演劇プロデューサー神山(峯村さん)の企画による新作舞台『PLAYER』の稽古が、演出家の東(真飛さん)を中心に行われています。国民的スターから地元の大学生まで、さまざまなキャリアを持つ俳優たちで立ち上げていくその劇とは…。
 
〈謎の死を遂げた女性、天野真は、死後も意識として存在し続けることに成功し、彼女と親しかった人間たちの記憶をアクセスポイントとして、彼らの口を借りて発言するようになる。天野を死に導いたのは環境保護団体の代表であり瞑想ワークショップの指導者、時枝(仲村さん)だった。「これは世界を変える第一歩だ」と言い放った彼は、助手の神崎(成海さん)とともに、死者の代弁者となる“プレイヤー”たちを新たな精神世界へ誘おうとする。天野と関わりのあった刑事の桜井(藤原さん)は、時枝たちの言動をいぶかしく思うが、自らも“プレイヤー”となったことから、徐々に時枝の思想に引きずりこまれていく〉

 

プレイヤー3

(左より)藤原竜也さん、成海璃子さん、仲村トオルさん
撮影:細野晋司

 
 “死者の言葉を再生(プレイ)する物語”、その戯曲を書いた劇作家はすでに他界しており、ゆえに俳優の道彦(藤原さん)や和夫(木場さん)たちがその台詞を口にすることも、すなわち死者の言葉を再生することに変わりなく…。稽古が進む中で、俳優たちは劇中のカルトな死生観に感覚を惑わされ、虚構と現実を混濁させていくのでした。
 
 SF、オカルト、超常現象といった世界をとことん追求する前川ワールドの中でも、ひときわ観客の心理の奥を突いて震撼させる作品のように感じました。ステージ上にあるのはたくさんのパイプ椅子と、簡素に組み立てられた“舞台セット”のみ。長塚さんは限りなくシンプルな稽古場の風景から、俳優さんたちが繰り出す言葉、その意識をとことん信頼して作品を立ち上げていったのだろうと思います。俳優自身の言葉、その俳優が演じる役の言葉、またプレイヤーとなって発する天野真の言葉…。それらを俳優役のキャストは瞬時に切り替えて放ちます。今しゃべっている人間ははたして生者なのか、死者なのか…と探るうちにどんどん物語に引き込まれ、いつしか筆者もしっかり虚実の境を見失っていました。不安定な心細さを感じながらも、舞台上で起こっていることがけっして非現実的とも思えなくなってくるのです。

 

プレイヤー2

撮影:細野晋司

 
 14人のキャストそれぞれが疑念を抱かせる人物として印象を残す、見事な群像劇。その中でも藤原さんと高橋さんに関しては、おそらく多くの観客がこのお二人のキャラクターに自己を投影して物語を追うのではないかと思いました。瞑想がもたらす力に傾くことへの戸惑い、劇中劇を虚構と受けとめられなくなる焦燥を、藤原さんは時に軽やかに、時にほのかな狂気を匂わせて表現。方や高橋さんは、自身とせめぎ合いながらも不条理を必死に否定する実直さに惹きつけられます。そして瞑想の指導者を演じた仲村さんが、物語が進むにつれてその存在を濃くしていく様は圧巻。死者との共存が世界の平和、持続可能な社会をもたらすと提唱する鋭利な表情は恐ろしくも魅力的で、単なる狂信者と片付けられない、確かに集団のリーダーになり得るべき影響力を感じさせてくれました。

 

プレイヤー5

撮影:細野晋司

 
 前川さんが書いた「死が生を侵食する物語」をもとに、長塚さんが立ち上げた「物語が客席を侵食する舞台」。そう簡単には払拭できない、快い違和感を持ち帰ること、請け合いです。そう、余談ですけどこの原稿を書いたのはお盆の時期。亡くなった人に思いをはせ、脳内で過去の出来事が甦り、その人の言葉がふと口をついて…。あっ、と『プレイヤー』を思い出し、ゾゾゾッ。これはやっぱり夏に観るべき芝居かと。ひと味もふた味も違う演劇を味わいに、ぜひともゲキネバ!でございます。

 まだまだ続きますよ! 次回もお楽しみに♪

 

上野紀子(うえの のりこ)■
プロフィール
演劇ライター。桐朋学園芸術短大演劇科、劇団文学座附属演劇研究所卒。『シアターガイド』『BEST STAGE』など演劇情報誌のほか、公演プログラムにて執筆。韓国演劇に関心を持ち、『シアターガイド』では2004年から韓国演劇情報を約十年に渡り連載した。2008年、文化庁在外研修で一年間ソウルに留学。高麗大学韓国語文化教育センター定期課程修了。韓国演劇を気にかけながらも、現在は日本のステージシーンのほうを注視している。BUTAKOMEイベントで時々MCも頑張ってます♪

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■

プレイヤー

 

『プレイヤー』

作:前川知大 演出:長塚圭史

出演:藤原竜也、仲村トオル、成海璃子、シルビア・グラブ、峯村リエ、高橋 努、安井順平、村川絵梨、長井 短、大鶴佐助、本折最強さとし、櫻井章喜、木場勝己、真飛 聖

 
■ 東京公演
日程:2017年8月4日(金)~8月27日(日)
会場:Bunkamuraシアターコクーン
料金:S席10,500円 A席8,500円 コクーンシート5,500円
※未就学児入場不可

 
■ 大阪公演
日程:8月31日(木)~9月5日(火)
会場:森ノ宮ピロティホール
料金:指定席11,000円 立見 9,500円
※未就学児童入場不可

 
■ 静岡公演
日程:9月9日(土)~10日(日)
会場:静岡市民文化会館・中ホール
料金:S席10,500円 A席8,500円
※未就学児童入場不可

 
※公演詳細は『プレイヤー』公式HP

 
 

 

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【中井美穂のヅカヅカ行くわよ♪<番外編>】『謎の変奏曲』橋爪功さん×..

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Profile

ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2017/11/17NEW

【速報】尾上松也さんが『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』..

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2017/11/12

📹【加藤和樹のエンタメCafe No.10】〈銀座エ..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

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【Official blog】 公式ブログ

2016/11/29

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.7 一味違った楽しさとパワ..

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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