大原薫の観劇コラム

【大原薫の観劇コラム】Vol.5『ポストマン』~丁寧に心情を紡いだオリジナルミュージカルの佳作

2017/12/29


ポストマン

海宝直人さん
photo:岩村美佳

 
翻訳ミュージカル上演が大半を占める日本で、オリジナルミュージカルをクリエイトするのはなかなか難しいことなのだろう。そんな中、7年かけて熟成させてきた作品『ポストマン』海宝直人さん、上山竜治さん、小南満佑子さんの出演でチケットは完売の人気に。作り手の息遣いが感じられる、あたたかな作品だった。

第1幕は現代日本、第2幕ははるか昔のエーゲ海の島が舞台。
まったく異なる時代、異なる国の3人の男女の物語が交錯する。

ポストマン

写真(左から)海宝直人さん、上山竜治さん、井手柚花さん

 
第1幕は絵葉書の作成を頼まれたイラストレーターの眞人(海宝さん)が南国の小さな教会を訪れることから始まる。そこで眞人はオルガン弾きの青年、英二(上山さん)に出会って、自分が本当に描きたいものを探す。そして、教会で出会った美月(小南さん)の絵を描き始める。

第2幕では、貧しい漁師のマルコ(海宝さん)と政治家の娘のソフィア(小南さん)の身分違いの恋と、二人の思いを届ける郵便配達人のパオロ(上山さん)の姿が描かれる。

ポストマン
 
1幕と2幕をつなぐものは輪廻転生。眞人とマルコ、英二とパオロ、美月とソフィアの魂がつながり、はるか昔の届けられなかった思いを転生した現代の日本で届ける……というストーリーだ。

教会をイメージした、白を基調とした抽象的な美術。柔らかなドレープカーテンが揺らぎをもたらす。3人と子役1人の芝居で微細な人間心理を丁寧に紡ぎ出す作品だ。
初演は2010年で、海宝さんは初演時から眞人/マルコ役で出演。海宝さんの希望によって今回の上山さんと小南さんの出演が決まったという。

原案は作曲の河谷萌奈美さん。河谷さんが「この作品を上演にこぎつけたい」という手紙をtekkanさんに送ったことがきっかけで、中井由梨子さんの脚本、tekkanさんの演出で上演されたとのことだ。作り手が大事にこの作品を育ててきたのが伝わる作品。なんともいえないあたたかみが年末の冷えた心に染み渡ってくるようだ。手垢がついていないピュアな魅力のある音楽。俳優でもあるtekkanさんの演出は丹念で、登場人物の心情を丁寧に描き出す。

ポストマン 1229
 
作品の主軸となるのは「届けたい思い」。はるか昔のアテネの「ポストマン」(郵便配達屋)は、現代日本で運命の二人を結びつけるキーマンとなる。「ただ一つの曲を残したい」と願って作曲を続ける英二が思いを届ける、というのがポイント。芸術は人と人の心をつなぐもの、という作り手のメッセージもここに浮かび上がる。

『レ・ミゼラブル』でマリウス、アンジョルラス、コゼットを演じた3人が、今回は一転して小空間でのミュージカルに取り組み、それぞれに大きな成果を上げた。

ポストマン
 
『ノートルダムの鐘』のカジモド、マリウスと大作出演が続いた今年の海宝直人さん。豊かな歌唱力を武器として活躍を続けているが、本作では細やかな演技に目を見張った。歌と台詞がシームレスにつながることで、眞人とマルコの心情が手に取るように伝わってくるのだ。特に、眞人では自分が何をすべきなのか見つけられずにいるという現代的な悩みをたゆたう佇まいで見せて、新鮮な感覚があった。マルコは恋に情熱的な青年のほとばしる思いを歌声に乗せて表現。二役の違いを効果的に演じつつ、繋がりも見せた。今、ミュージカル俳優として勢いに乗っている感がある海宝さんが、このタイミングで小空間での密な作品に取り組もうとする意欲が頼もしいと思う。

ポストマン
 
英二/パオロ役の上山竜治さん。タイトルロールとなる「ポストマン」を演じて、確かな演技力が光る。「思いを届けたい」というメッセージが明確に伝わってきた。ダイナミックな表現が上山さんの魅力の一つだと思うのだが、本作ではさらに深みを加えて、一段の成長を感じさせた。海宝さんと上山さんの間にある信頼感が眞人と英二、マルコとパオロの関係性にも反映して、作品をさらにあたたかなものにしていたように思う。

ポストマン

小南満佑子さん

 
美月/ソフィアの小南満佑子さん。伸びやかな歌声が美しく、一つ一つを丁寧に演じている姿に好感が持てた。特にソフィア役の最後のシーンで、マルコの思いを受け取り、変化を遂げていく姿を印象的に見せた。

丁寧なこだわりを随所に感じさせられる作品。個人的には設定で気になった部分もあるのだが(輪廻転生の考えはキリスト教文化に馴染まないのでは……?とか。キリスト教の教会が作品の大きなモチーフになっているだけに気になった)このあたりの設定をうまく処理しつつ、作品をどんどん発展させていって、日本が世界に誇れるオリジナルミュージカルの一つとして大きく育てていってほしいと思う。

ポストマン
 

photo:岩村美佳

 
大原 薫(おおはら・かおる)■
プロフィール
演劇ライターとして雑誌(BEST STAGE、Sparkle、STAGE NAVI、ミュージカルなど)や公演パンフレットなどで執筆。ラミン・カリムルー、レア・サロンガ、シンディ・ローパー、ハーヴェイ・ファイアスタインなど海外ミュージカルスター・クリエイターにも精力的に取材する。ブロードウェイミュージカルの魅力に惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝える。テレビ番組『アカデミーナイトG』に「4000本以上を観劇したカリスマ演劇ライター」として出演、ミュージカル『ビリー・エリオット』の魅力を熱弁した。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び!

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■
 
坂東玉三郎 越路吹雪を歌う『愛の讃歌』
 
出演:坂東玉三郎
   真琴つばさ、大空ゆうひ、水夏希、霧矢大夢、凰稀かなめ
   海宝直人

演奏:三枝伸太郎とグランドオーケストラ

演出:小林香
プロデュース:高橋まさひと
音楽監督:三枝伸太郎

日時:2018年4月12日(木) 18:30開演
会場:NHKホール

チケット:SS 席 ¥12 ,500 /S席 ¥11,000 /A席 ¥5,000 
※全席指定 /税込 未就学児童 入場不可

発売日:2018年1月 28 日(日)10:00
チケットに関するお問い合わせ http://kyodotokyo.com
キョードー東京 TEL 0570-550–799(平日 11:00〜18:00 土日祝 10:00〜18:00)

主催:「坂東玉三郎 越路吹雪を歌う 」実行委員会

協力:松竹エンタテインメント/岩谷時子音楽文化振興財団 / 株式会社内藤音楽事務所
   ユニバーサル ミュージック

ON AIR 情報!!

2018初春、坂東玉三郎さんと海宝直人さんの対談が実現!

2018年1月2日(火)21:30~22:19 NHK Eテレ
「坂東玉三郎が愛した女 ~越路吹雪に魅せられて~」
番組詳細はコチラ

 

シアノタイプ「光」
2018年1月24日リリース!!

  • 初回盤
    [初回盤(CD+DVD)]:SICL-30040~30041 ¥1,800+税
  • 通常盤
    [通常盤(CD)]:SICL-30042 ¥1,300 +税

 
[CD収録曲]
01 光 (作詞・作曲:西間木陽 編曲:半田彬倫)
02 赤茶けた (作詞:海宝直人 作曲:西間木陽 編曲:半田彬倫)
03 光 (instrumental)
04 赤茶けた (instrumental)

DVD(初回盤のみ)
01 西間木陽インタビュー
02 雪と君の手 (Live at shibuya duo MUSIC EXCHANGE)
03 sing a song (Live at shibuya duo MUSIC EXCHANGE)
04 小山将平インタビュー
05 海宝直人インタビュー

※詳細はレーベル公式サイト

★レコ発ライヴ決定!

2018年2月  2日(金)大阪 OSAKA MUSE
2018年2月  4日(日)東京 shibuya duo MUSIC EXCHANGE
2018年2月16日(金)福岡 Gate’s 7

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2017/12/14

速報!【中井美穂の幕内対談 Vol.3】アミューズ会長・大里洋吉さん..

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Profile

ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2017/11/24

【本編】尾上松也のエンタメ異文化交流録『ローゼンクランツとギルデンス..

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2017/12/20

📹【加藤和樹のエンタメCafe No.12】〈銀座エ..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

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2016/11/29

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.7 一味違った楽しさとパワ..

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
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ブタコメ編集部

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