演劇・ミュージカル

インタビュー

瀬奈じゅんさんSpecialインタビュー▷『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』~3人でヒロイン・アリソンの“今”を生き抜く~

2018/02/05


 

瀬奈じゅんFUNHOME002

 

3人でヒロイン・アリソンの“今”を生き抜く

 
――ホン読みを終えられ、立ち稽古に入ったところと伺っています。現時点でアリソン役をどう捉えていらっしゃるか、教えてください。
 
最初、アリソンさんの内面をどう演じようかと、すごく迷ったんですよね。というのも、出演が決まって、まず原作の漫画を読んだんですが、父親に対しての彼女の葛藤は見えてくるのに、レズビアンであることを自覚してからカミングアウトするまでの葛藤は見えてこなくて。役を演(や)る前提で読んだので、私の「もっと知りたい」という欲が勝(まさ)っていたのかも……とにかく最初は彼女の内面がつかみづらかったんです。
 
――漫画ではアリソン自身の思い出や感情が客観的に描かれているんですよね。
 
そうなんです。でも読み手なら、性のことやお父さんとのことなど、彼女にどんな悩みがあったんだろうかと、気になるじゃないですか。なのに、まるで他人事のように淡々とつづられていて、内面の葛藤が見えてこない。それがアリソンさんそのものなのか、読みモノとしての技法なのかは分かりませんが、とにかく、不思議な魅力の持ち主だなとは思いました。

その後、漫画を読み直し、さらに上演台本を読み重ねていくうちに、「あ、そうか、彼女は小さいころからレズビアンだったんだから、自然にそうであると自覚していったんだろうな」と気付くことができた。それからはだいぶ役になじんできましたね。

あと先日、演出の小川(絵梨子)さんからヒントをいただいたんです。アリソンさんがカミングアウトするところを、英語台本では「complete」と言っているって。「なるほど~、一区切りつけて先に進んでいくってことなのかな」と腑に落ちました。その「complete」という単語――日本語にするのが難しくて――のおかげで自分なりにアリソンさんの感情の流れが見えたし、「ヨシ、この役やれる」とも思えた。もちろん、舞台に上がるまでにまだまだ悩み、考えることがいっぱい出てくるんでしょうけど。アリソンさん、そして作品について理解しつつある、理解できるなっていう手ごたえがあります。

 
――舞台ではアリソンが漫画で描いたさまざまな思い出の一場面が、一つの物語として立ち上がります。ただ、紹介されるエピソードは時系列がバラバラなんですよね。
 
そう、アリソンさんの現在、小学生時代、大学生時代と、話は前後にポンポン飛んでいきます。「アリソン」という人物については、なんとなくつかめてきた。でも、彼女が振り返っていく思い出の数々、その時間の流れは、正直まだつかみ切れていません。ただ、過去の記憶って、「思い出そう」と思って呼び起こされる場合のほかに、たまたま目に入ったものや耳に入った音など、外的なきっかけによって呼び起こされることもあるじゃないですか。だからきっと彼女も、何か書こうと製図台の前に立った時、目に入ったものから「あんなこともあったな。こんなことも……」って、思いをはせていったんじゃないかなと。

 
――小学生時代、大学生時代、現在のアリソンそれぞれを、別々の女優さんが演じ分けるのも見どころとなっています。
 
何が残念って、同じ役をやるせいで素敵な女優さんたちと芝居的な絡みができないことですよ!……なんて(笑)。 みんなで一つの役を演じることについては、ある一つの“気持ち”を共通認識として根底に持っていれば大丈夫だと、私は考えていて。その気持ちっていうのは、子どものアリソンがダイナーでトラック運転手の女性に出会い、彼女に抱いたトキメキ。女性を見て「素敵だな」って思った、その時の素直な気持ちを大事にさえすれば、子ども時代を演じる二人も、大学生時代を演じる(大原)櫻子ちゃんも、先のことは現在のアリソンこと私に任せて(笑)、その瞬間瞬間のアリソンを表現するだけ。みんなでアリソンさんの“今”を生き抜くんです。

 

<次のページ>
女優としての新たな可能性への期待

 

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
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【本編】尾上松也のエンタメ異文化交流録『ローゼンクランツとギルデンス..

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/03/29

📹【加藤和樹のエンタメCafe No.15】〈丸の内..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

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2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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