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演劇ライター・大原薫のBwayミュージカルレポート2017◎第4弾◎観客がミートパイ屋のお客に! 実体験型ミュージカル『スウィーニー・トッド』はダーク・コメディ

2017/12/31


 

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日本では日生劇場や帝国劇場などの大劇場で上演されている『スウィーニー・トッド』。映画化もされて知り尽くした作品……と思っていたのに、オフブロードウェイで上演されている本作は全然違っていた。劇場自体を劇中に登場するミートパイ屋に仕立て上げ、観客はミートパイ屋のお客となって、『スウィーニー・トッド』の物語を実体験する。スリリングな一時だった。

元々はロンドンの一番古いパイ屋で上演されていたプロダクションのオフブロードウェイ公演(演出はビル・バックハースト)。上演されているのは周辺に劇場などない、普通の住宅地の一角にあるバロウ・ストリートシアター。
 

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「無実の罪に陥れられた理髪師のベンジャミン・バーカーはスウィーニー・トッドと名前を変えて、復讐のためにパイ屋の2階に理髪店を再開。復讐相手をカミソリで殺した後、パイ屋のラヴェット夫人が“人肉パイ”を作って死体処理に……」

というダークなストーリーで、バロウ・ストリートシアターを劇中に出てくるミートパイ屋に模して、観客をミートパイ屋のお客に見立てるという趣向だ。
 
劇場に入ると、ミートパイの売り場があり、食事用の長テーブルセットがいくつも並ぶ。開演前、希望者は実際にミートパイを有料で食べることができる。劇中のミートパイは「人肉」という物騒な設定だが、もちろんこのミートパイは(当たり前だが)そんなこともなく、なかなか美味しいミートパイだった。
(後から知ったのだが、このミートパイを作っているのは、オバマ元大統領のシェフだった人とのこと! こんな楽しいサプライズも用意されているのだ)
 
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パイを食べ終わってしばらくするとキャストたちが劇場に登場し、歩き回って観客たちと親しく会話を交わす。オープニングナンバーが始まると、和やかなムードは一転。キャストがスティーブン・ソンドハイムのスリリングでダークなナンバーを圧倒的な迫力で歌い出す。その変貌ぶりに一瞬にして心を掴まれた。
 
キャストは客席正面部分や客席通路をステージとして使うだけでなく、観客の座っている長テーブルの上も縦横無尽に歩き回って演じる。近いときには自分の20センチ先でキャストがソンドハイムのナンバーを歌うのだ。テーブルに乗ったトビー役のジョン・マイケル・ライルスが私を凝視して歌う瞬間も! 「目をそらすまい」と私も見返して…という展開もあった。観客を盛り上げる客いじりもあり、観客はいつしか18世紀末のロンドンの住人となり、パイ屋のお客ともなって『スウィーニー・トッド』の世界を体験することとなる。

 
また、1幕と2幕の間の休憩時間は全員をロビーに出るように促された。すると、2幕の始まりは役者がロビーに現れて歌い出すところから始まったり。歌い終わって皆でぞろぞろと客席に戻るときにふと足元を見たら、「物乞い女」役の方が通り過ぎる観客たちに物乞いを呼び掛けていたり。こんな様々な仕掛けには、創造的な楽しみが溢れている。

 
こうして、ごく身近な形で『スウィーニー・トッド』を見るうちに、以前はまったく気づかなかった一面が見えてきた。日本で見た松本幸四郎さん主演版、市村正親さん主演版も極めてシリアスな作品という印象だったが、今回見て初めて『スウィーニー・トッド』はこんなにも笑える作品なのかということを知ったのだ。ここで演じられているのはダークでブラックなコメディ。復讐の連鎖というとてもシリアスなテーマを持ちながら、そんな人間の恐ろしさをシニカルに笑い飛ばすことで、より恐怖がリアルになるのだ。

 
小空間だからこそ聞かせられるソンドハイムの音楽の面白さも印象的だった。全14人で演じているため、本役を演じているとき以外はアンサンブル役も兼ねて演じてコーラスも歌う(女声パートが足りないときは、男性がファルセットで女声部分を歌う!)。オーケストラもわずか3人でソンドハイムの難解な楽曲を紡ぎ出す。日本人のTomoko Akaboshiさんがヴァイオリンを演奏し、豊かな音色を聞かせていた。

 
 

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この親密な空間でキャストが最大限に魅力を発揮する。

私の観劇時のスウィーニー・トッド役はデヴィッド・マイケル・ギャリーノーム・ルイスヒュー・パナロとブロードウェイで『オペラ座の怪人』のファントムを演じた二人の合間の短期間キャスティングされたデヴィッドだったが、暗い瞳が印象的で非常に迫力があるトッドだった。初めは被害者のはずだったトッドが復讐に燃えるうちにどんどん度を越していってしまう様子を、実にリアルに演じていた。

アンソニー役のマット・ドイルは以前、『春のめざめ』ジョナサン・グロフの代役で主役のメルヒオールを演じたのを見たのが印象的だったが、それから約10年たっても初々しい美少年ぶりが健在だった。

 
わずか130席の小空間で演じられるミュージカル。演劇的にも様々な挑戦を行って、有名な傑作ミュージカルに新たな光を当てた。スリリングな演劇体験だった。

 

文・写真/演劇ライター 大原 薫

 
大原 薫(Kaoru Ohara)■
プロフィール
演劇ライターとして雑誌(BEST STAGE、Sparkle、STAGE NAVI、ミュージカルなど)や公演パンフレットなどで執筆。ラミン・カリムルー、レア・サロンガ、シンディ・ローパー、ハーヴェイ・ファイアスタインなど海外ミュージカルスター・クリエイターにも精力的に取材する。ブロードウェイミュージカルの魅力に惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝える。テレビ番組『アカデミーナイトG』に「4000本以上を観劇したカリスマ演劇ライター」として出演、ミュージカル『ビリー・エリオット』の魅力を熱弁した。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び!

 

『SWEENEY TODD』

 
MUSIC AND LYRICS:STEPHEN SONDHEIM
Book:HUGH WHEELER
DIRECTOR:BILL BUCKHURST
 
Cast:HUGH PANARO ほか

 
時間:基本スケジュール
火・水・木 19:30 / 金 20:00 / 土 14:30・20:00 / 日 14:30・19:30 / 月 休演日
 
劇場:BARROW STREET THEATRE
27 Barrow Street(Map)
 
※『SWEENEY TODD』公式サイト

 
【BUTAKOME☆BWAY観劇ナビ】
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連載☆エンタメコラム

2018/06/09

堤 真一×中井美穂 スぺシャル対談▷6月16日開幕!『お蘭、登場』

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2018/06/21

【早霧せいなのビタミン“S”】其の三 .「新しいことに挑戦」

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

2018/06/04

尾上松也のエンタメ異文化交流録▷ミュージカル『メリー・ポピンズ』大阪..

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/05/18

📹【加藤和樹のエンタメCafe No.17】〈三軒茶..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

【Official HP】 公式サイト
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2018/06/30

【柳亭こみちのちょいと一回のつもりで聴いて】Vol.3「オツの中のオ..

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東村山市出身。2003年、七代目柳亭燕路に入門。前座名「こみち」。2006年、「こみち」のまま二ツ目昇進。2017年、「こみち」のまま真打昇進。歌って踊れて落語のできる女、老若男女から友達になりたいと思われるような噺家を目指している。亭主は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。漫才師と落語家の夫婦は史上初。二児の母として真打に昇進したのも、落語史上初。「落語坐こみち堂」「なかの坐こみち堂」をはじめ、日々多数の落語会に出演し、ナレーション、講演活動、執筆活動、学校寄席への出演も多々。こみちが大きな出世街道となるよう、鋭意奮闘中
【Official HP】 こみちの路

2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

【突撃!G&B】第八回 グリブラの裏側全部見せます

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ブタコメ編集部

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