伊礼彼方の物見遊山

『ピーター・パン』~伊礼彼方・演劇コラム~

2011/08/06


BUTAKOME

きっとさっきまで混雑していただろう後の、少し静けさを取り戻した電車を降りて、私は10時30分に有楽町駅の改札を通った。

毎年夏に行われているブロードウェイミュージカル「ピーターパン」を観に、いつもより少し早起きをした。
まだ午前中だというのに、眩しい日差しに「あっちぃ~」と無意識に声を漏らしながら、国際フォーラムCの入り口まで歩みを進める。
入り口では色鮮やかな風船や、ピーターパンとフック船長のポスターが出迎えてくれた。

扉を開けると「わぁ!ママ見て!」「すごいよ!」という素直でストレートな歓喜の声や、期待に胸を膨らませながらも「こわいよ!」と言いながら泣き出す子供たちの、様々な声が飛び交っていた。

「ここはテーマパーク?」それとも「幼稚園?小学校?」と勘違いするくらい、溢れんばかりの子供でロビーが埋め尽くされていた。なんだか、空気が柔らかい。

全員を見た訳ではないが、多分、いや、きっと9割ぐらいが子供連れ親子での観劇だろう。
おかげでいつものロビー観察に比べ、僕の視界はひらけていた。
「ううん、楽ちん」身長2メートルくらいの人ってこういう気分なんだろうか。

ロビーでは、3等身ぐらいのマスコットのピーターパンやフック船長が元気良く歩いていて、笑顔で出迎えてくれる。

BUTAKOME BUTAKOME

「縁日コーナー」と書かれた一角にはサッカーコーナーや輪投げなどの遊び、記念撮影の出来る実写「ピーターパーンとフック船長」の等身大パネル(※冒頭写真)が置いてあった。
どうやらこの撮影パネルが一番人気らしく、カメラを片手に長い行列を作った親子が順番待ちをしていた。

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どの親子も並ぶ姿はそれぞれ様々だが、みんながみんな「この先に明るい未来が待っている」かのような、希望に満ち溢れた表情だった。
「私にもこんな時期があったんだろうな・・・」と、己の幼少期に想いに馳せていたら、
「このパネルで撮りましょう!」というスタッフの言葉で、一気に淡い想い出は削がれ現実に引き戻された。

まぁ仕事なので仕方がないのだが、さすがに目をキラキラさせた子供たちを差し置いて写真を撮るのも大人げない。
何よりこの中に並んで撮るのは、さすがのこの私でもちょっと恥ずかしい。
なのであとでこっそり休憩時間、子供たちが一幕のピーターパンに興奮と余韻を覚えてる合間に気づかれずにすかさず撮った。(今日いちの仕事だったね。良くやった、私)

トイレで手を洗っていると開演5分前のベルが鳴った。
「まもなく始まりますのでお早めにお席にお着き下さい」と丁寧に叫ぶ男性の声に焦らされながら席に着いた。

久しぶりの国際フォーラム。
一昨年、私は「アイーダ」という作品でここの舞台に立たせて頂いた。
あの時も毎日暑かったな・・・遠い日の想い出。

今度は客席で味わう、開演直前の緊張感。
でも、なぜかいつもの感覚と違う。
もし私が耳栓をしていたら、ガラガラだと勘違いしそうなくらい会場の席が空いてみえた。
だが私の耳はそこそこいい、まして耳栓なんてしていない。
なぜこんなに空席が・・・・・・・・
場内をよく見て耳をすましてみると、背もたれの高い座席に隠れた小さな暴れ坊たちが「今か今かと」ピーターパンの登場を待っていた。
すごいパワーだ。
場内を埋め尽くす小さな暴れん坊たちが、会場の壁に自分の声をぶつけていた。
そしてその隣では壁に跳ね返ってきた声を鎮めようと、暴れることを忘れた大きな人間がすごい形相で「しー!しー!」と無駄に人差し指を立てていた。はははははははははははは

さて!小説っぽく書くのはやめよう(笑)いつもの感じに戻しまーす!

書いてたら楽しくなっちゃって!!!ははは、でもコラムだからね(笑)
このままじゃ何十ページあっても足りないし、おかしくなりそう!
「何が始まるんだ!」ってビックリしたでしょ!?
俺もビックリした!お互い様だね(笑)でもこれで雰囲気は伝わったかな。
舞台の内容だけではなく、会場の隅々にいたるまで子供たちの心を大事にしてる主催者はじめ、関係者方々の気持ちが嬉しくて、どうしてもちょい細かく伝えたかったんです。
やっぱこういう仕事(夢を売る仕事)はこうであって欲しいですね。

物語の内容は書くまでもなく、大体の方がご存じだろう。
空の飛べるピーターパンがウェンディ達をネバーランドに連れて行き、そこでいろんな出会いがあり、戦いがあり、笑顔や涙があり・・・、夢の詰まった作品なのです。

なんで3幕ものにしてるんだろう?そんなに長いのかなぁ?と思っていたら、理由はいろいろあると思うんですが、それを象徴するかのような如実な出来事が起こった。
30分過ぎた頃から、暴れん坊たちがざわつき始めたんです(笑)
子供の集中力に合わせたスケジュールになってるんですね。素敵!

演出も子供に解りやすい作りになっていて、演者が大きいリアクションをとるたびに暴れん坊たちは力一杯声をあげて笑う。
それにつられるように大人も思わず声をあげてしまう。不思議な力だ。
僕が一番感動・感激したのは暴れん坊たちの、とにかく真っすぐな心。
面白いシーンは大きな声で笑い、戦いのシーンでは身を乗り出して身振り手振りで「危ない!」「負けないで!」「後ろ!」と叫びながら応援し、別れのシーンでは「バイバイ」「さようなら」と悲しそうな声でつぶやく子もいた。

まるで彼らの声が演出のひとつになっているみたいだった。
でもそれが予定調和じゃなく、その瞬間生まれた素直な言動だから、何の違和感もなく作品に花を咲かせるようだった。
彼らの真っすぐな言動がこんなにも作品を彩るなんて思いもよらなかったから、作品と子供たちの繋がりに感動してしまった。
これぞ、生(ライブ)だからこそ生まれてくるものなんだろう。この不思議な感覚を舞台上で体感できる役者さんたちが、非常に羨ましく感じました。

そういえば、このミュージカルを見る前に原作を読みました。
(ジェームズ・バリーの「ピーターパン」)
まだミュージカル版のように脚色されてないピーターパンは、最初「この作家は何書いてるの?」と、はてなマーク続きでしたが、読み終わって、「産まれてきたかったけど産まれてこれなかった」
あるいは「産まれてすぐに亡くなってしまった子供の話」だと感じました。
何かを求めてはいるが、その何かが解らずに一人彷徨うその子の霊魂は、救われない悲しい話だと。
悲しい物語りに込められた希望というか理想というか願いというか・・・そういったテーマがまたさらに悲しい。
そんな奥の深い原作をベースに作られていた事を、今回をきっかけに知ることができました。
“大人になりたくない子供”=“ピーターパン”。
本当には、“大人になりたかったけど、なれない運命にあるピーターパン”なのかもしれない。

そんな、色々な事を考えさせられた今回の観劇で、一番印象に残っているのは子供たちのパワー。
この小さな体のどこにあんな力を秘めてるんだろうと。僕たちもそうだったのか?
そして「子供子供」って書いてる僕は失礼だと思った。
子供は子供でも、子供は子供なりに自分の感覚や本能で本質を見抜いてるんじゃないかと思うんです。
時に子供の方が冷静だったり、子供の方が賢かったり。
子供は小さな大人なのかも知れませんよ。気をつけて下さいね。
何もかも見透かされてるかも知れませんよ。

この作品を観て、親子のコミュニケーションや子供の想像を豊かにさせるのに役立てて下さい。
そして、時には自分も童心にかえって、あの頃の純真な心を思い出して下さい。

僕も子供の頃にこういう刺激を味わっていたら、人生変わっていたかもしれません。
なによりピアノは習っとけばよかったなぁ!!!いまさら何を言うオレ!

子供たちに未来を託して、あばよ!

あなたはまだ、自由に空を飛べると信じてますか?

では、信じてる方も、そうでない方も、

あなたは、何を信じてますか?

カーナーターパンより

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劇団☆新感線「港町純情オセロ」で共演された、
フック船長・橋本じゅんさんと。
橋本さんの楽屋には、伊礼さん歓迎のディスプレイが☆

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ウェンディの弟・マイケル役で出演されてた飯田汐音(しおん)ちゃんと伊礼彼方さん。
「アンナ・カレーニナ」で一緒に出演したお二人。
思いがけずの再会に二人とも大喜び◎
アンナの息子・セリョージャ役でも名演技の汐音ちゃん、「ピーターパン」でも大活躍でした!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」

<愛知公演>
■ 期間:2011年8月18日(木)15:30開演
■ 会場:刈谷市総合文化センター 大ホール

<兵庫公演>
■ 期間:2011年8月20日(土)15:30開演、
           8月21日(日)11:00/15:30開演
■ 会場:兵庫県立芸術文化センターKOBELCO 大ホール

※「ピーターパン」公式HP,公演情報詳細はコチラへ。

【プロフィール】伊礼彼方

※画像およびテキストの転載を禁止します。

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2018/08/10NEW

岩井秀人×中井美穂 スぺシャル対談▷ハイバイ15周年記念『て』『夫婦..

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2018/07/31

【早霧せいなのビタミン“S”】其の四 .「幸せを届けること」

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

2018/07/17

尾上松也のエンタメ異文化交流録▷ミュージカル『モーツァルト!』

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/08/06

📹【加藤和樹のエンタメCafe 番外編】〈大阪・梅田..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

【Official HP】 公式サイト
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2018/07/23

【柳亭こみちのちょいと一回のつもりで聴いて】Vol.4「シュークリー..

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東村山市出身。2003年、七代目柳亭燕路に入門。前座名「こみち」。2006年、「こみち」のまま二ツ目昇進。2017年、「こみち」のまま真打昇進。歌って踊れて落語のできる女、老若男女から友達になりたいと思われるような噺家を目指している。亭主は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。漫才師と落語家の夫婦は史上初。二児の母として真打に昇進したのも、落語史上初。「落語坐こみち堂」「なかの坐こみち堂」をはじめ、日々多数の落語会に出演し、ナレーション、講演活動、執筆活動、学校寄席への出演も多々。こみちが大きな出世街道となるよう、鋭意奮闘中
【Official HP】 こみちの路

2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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