落語「J亭」

広瀬和生の「J亭を聴いた」第10回大手町二人会 「白酒・一之輔」(令和元年11月分)<101>

2019/12/10


 

白酒

一之輔

 
「J亭スピンオフ企画 隔月替わり二人会」、
11月21日(木)「白酒・一之輔」二人会。演目は以下のとおり。

柳亭市坊『真田小僧』
柳亭市弥『髙砂や』
春風亭一之輔『時そば』
桃月庵白酒『厩火事』
~仲入り~
桃月庵白酒『馬の田楽』
春風亭一之輔『鼠穴』

 

前座にしては高座態度が堂に入っている市坊に続き、二ツ目ゲストの市弥も市馬門下。聴き心地の好い語り口で堅実に演じた『髙砂や』には市弥の成長ぶりがよく表われていた。

 

一之輔の一席目は『時そば』。一文かすめた男を見て「“寒いね”って蕎麦屋のせいじゃないし」「“何が出来るの?”とか無駄」「“景気はどう”って初対面で訊く距離感の無さがキライ」とツッコミを入れてた男が翌日に真似してみると、ことごとく自分に返ってくるのが可笑しい。この、翌日出会う“なごや”という蕎麦屋の嫌味なキャラが一之輔ならでは。鉛筆2本が箸の代わりで丼に泥が付いていて、汁を飲むと痛くて、麺はきしめんより太くベトベトで、中にトローチが入ってるトンデモ蕎麦なのに「儲かって儲かって笑いが止まらない」理由が凄すぎる。食べると記憶が曖昧になってきて次第に楽しくなってくるこの蕎麦屋の行灯には沢尻エリカのサインが。しかもお代は20文! 他に類を見ない独創的フレーズ満載、破壊力抜群の爆笑編だ。

 

代わって高座に上がった白酒『厩火事』。夫婦喧嘩の理由は「朝ご飯は鮭を焼くから食べて」「いや芋が食べたい」。それで「別れたい」と駆け込んできたお咲に旦那が「あいつは気に入らない」と持ち出すのは「昼間から牛をつついて酒を呑んでた」こと。「“クソババア!”なんて言われて、いっそ殺してやろうと思うんですけど、後で急に優しい声で“さっきは悪かった。こんな可愛いクソババアがいるわけないじゃないか”なんて肩を抱き寄せるから“やだ、まだ日が高いのに”“いいじゃないか”なんて♪」とノロケ始めるのは白酒だけのバカバカしい展開。唐土や麹町の逸話を語る旦那の話の腰を折りまくるお咲の「一言多い」キャラが素敵すぎる。

 

仲入りを挟んで白酒が演じた二席目は『馬の田楽』。馬で味噌を運んできた男、悪ガキ、呑気な三州屋、耳の遠い婆さん、立っている気の長い男、酔っ払った男それぞれの描き分けが絶妙で、のどかな田舎風景の中でのドタバタ騒ぎが目の前で起こっているかのよう。とりわけ「タケやんが悪いだ!」と主張する悪ガキの可笑しさは白酒ならでは。持ち前の“田舎言葉の上手さ”が光る逸品だ。

 

一之輔のトリネタは『鼠穴』。働き者の竹次郎が町内で信用を得て所帯を持って出世していく経緯をわかりやすく描き、十年後。「暮れの挨拶に」と兄を訪ねた再会の場面での、兄が「勘弁してくれ」と打ち明ける“あの時の本心”が真に迫っていて、優しさが強調されているのが特徴的。泊まった夜中に一度「火事!?」「夢だ」というくだりがあるのは一之輔の創作。火事で無一文になって再び兄の許を訪ねたときの「店の金は奉公人のものという考え方もある。五両なら俺の懐銭だ、返さなくていい」「人には寿命がある、薬飲んで治るもんは呑まなくても治る」等の台詞は橘家圓太郎の演出に由来するものだが、その演じ方には一之輔の個性が出ていて説得力がある。最後に笑いを交えてスッキリさせるのは一之輔ならでは。「夢は五臓の疲れ」を殊更にマクラで説明したりせず、兄の台詞として言わせているのは見事。随所に小さな工夫も加わり、去年聴いた『鼠穴』より進化した。

 

■□■BUTAKOME☆Information■□■
 

白酒・三三・一之輔大手町二人会

 

J亭 スピンオフ企画
白酒・三三・一之輔(隔月替わり)大手町二人会 
第11回「スペシャル三人会」

日 時:2020年3月12日(木) 19:00開演

会 場:大手町 日経ホール

出演者:桃月庵白酒・柳家三三・春風亭一之輔

料 金:全席指定4,100円
※未就学児童入場不可
 
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2020年1月10日(金)10時から発売開始

■チケットぴあ http://pia.jp/t/
※電話予約:0570-02-9999 〔Pコード:498-860〕

■ローソンチケット https://l-tike.com/
※電話予約:0570-084-003 〔Lコード:32032〕

■オフィスエムズ http://www.mixyose.jp/
※電話予約:03-6277-7403(10:00~17:00)

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主催:産経新聞社
制作:大手町アーツ
協力:日経ホール

問い合わせ:産経新聞社 新プロジェクト本部 03-3243-8343(平日10:00~17:00)

※画像およびテキストの転載を禁止します。

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

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1985 年生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。1990 年 5 月、「伽羅先代萩」の鶴千代役にて二代目 尾上松也を名のり初舞台。近年は立役として注目され、2015年より、次世代の歌舞伎界を担う花形俳優が顔を揃える「新春浅草歌舞伎」に出演し、「仮名手本忠臣蔵」早野勘平、「義経千本桜」狐忠信、「義経千本桜 吉野山」佐藤忠信 実は 源九郎狐などの大役を勤める。一方、2009 年からは歌舞伎自主公演 「挑む」を主宰している。

歌舞伎の以外でも、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2013)ベンヴォーリオ役、「エリザベート」(2015)ルイジ・ルキーニ役、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版のマウイ役、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)今川氏真役、初の主演ドラマ「さぼリーマン甘太朗」等、活躍の場を広げている。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト

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