カテゴリー

最新記事

落語「J亭」

広瀬和生の「J亭を聴いた」 (平成25年8月分)<35>

2013/10/30


2013年8月23日(金)、「J亭 柳家三三独演会」。演目は以下のとおり。

春風亭朝也『そば清』
柳家三三『転宅』
柳家三三『もう半分』
~仲入り~
柳家三三『唐茄子屋政談』

開口一番で登場したのは春風亭一朝門下の二ツ目、朝也。『そば清』、柳家さん喬の演り方によく似てるなぁと思って後で訊いたら、さん喬に教わったのだとか。やっぱり!

三三の一席目は『転宅』。お妾さんに手玉に取られた泥棒の描き方が以前にもまして面白くなった。独自の台詞も増えた気がする。泥棒噺の得意な小三治一門らしい、いい『転宅』になってきた。

そのまま三三は高座を降りずに二席目の『もう半分』へ。11月の終わり、寒風の吹く中、永代橋のたもとの居酒屋にやってきた爺さんは60近い年齢。三三はこの爺さんを「初めて来た客」という設定で演る。「腹の虫がグビグビって言ったから素通りできなかった」という言い方が何となく小三治を思い出させる。芋の煮っころがしは食べない、というのも小三治の『もう半分』と同じ。爺さんが忘れていった百両の金を返してやろうとする亭主、それに対して「正直者は馬鹿を見る。腹くくるんだよ!」と悪事をそそのかす女房。女房のイヤらしい感じ、こういうのを演ると三三はピタッとハマる。

慌てて戻ってきた爺さんを、まず亭主が応対するが、すかさず女房が割り込んできて、強引に亭主に「何も無かった」と言わせる。爺さんは身の上話をし、18になる娘が吉原に身を売った大事な金だと訴えるが、どうしても返してもらえず、夫婦に掴み掛っていくと「手荒な真似はいけねぇぜ」と亭主は爺さんを殴りつけ、襟首掴んで引きずり出して戸を荒々しく閉める。五街道雲助の『もう半分』ほどの極悪人夫婦ではないけれど、女房にそそのかされたこの亭主も相当イヤな奴になっている。「百両の金に目がくらんだんだな…この恨み…」と呟く爺さんの形相。永代橋の真ん中、居酒屋を振り返ってジッと睨んで、ドボンと身を投げた…この辺の怪談じみた描き方が三三は抜群に上手い。その後の展開もまさに怪談。これぞ柳家三三の真骨頂!という怖い噺になっていた。

トリネタ『唐茄子屋政談』は若旦那が勘当される場面から始まり、居候した先をたらい回しにされる様子を丁寧に描くあたりが三三らしい。吾妻橋で叔父さんに出会う場面では定番の台詞をカットし、無理に笑わせないのもいい。「甘い言葉は掛けるなよ」と叔父さんが一言で叔母さんを制し、これまた定番の台詞をカットする潔い演出。「知ってのとおりおじさんは八百屋だ」と言って唐茄子を売らせる場面へ。このトントンと進むペースは、吉原田圃で終わらせずに最後まで演りきるならベストだろう。少なくとも、三三のこの演り方は気持ちいい。

そして吉原田圃、妄想炸裂させる若旦那が文句なく可笑しい! 一転して後半の人情噺風の展開に進み、ここでも三三ならではの工夫が色々あって感心する。貧乏な母子、女が打ち明けるのは「夫は讒言によって浪人した身。潔白を明かすために国表へと出たきり戻らない」という設定だ。この母子に売り上げを恵んで帰った時に、叔父さんは徳の言い分を疑うのではなく「気前がいいな、お前じゃなきゃできないことだ」と、若旦那であるがゆえの優しさを素直に認める。「わかってる、今朝までのお前なら疑うけれど、今のお前は違う。信じるよ」 いい叔父さんだ。「ちょっと気になることがある、婆さん、ちょっと出てくる……吉原? 違うよ! 今の話きいてなかったのか!」と、ちょっと笑わせて長屋へ。

叔父さんの心配は当たり、女は因業大家に金を奪われて絶望し、首を吊ったというが、「すぐに梁から下ろして寝かせ、今は息を吹き返しています。早く助けてよかった」という。それを聞いた叔父さん、「私も大家をしていますが、あまりといえばあまり…」と一言。八百屋の叔父さんは大家でもあった、という型である。スッキリとして胃にもたれず後味爽やかな絶品の『唐茄子屋政談』だった。

※画像およびテキストの転載を禁止します。

バックナンバー

インタビュー

前山剛久003

前山剛久

▷シェイクスピアの傑作喜劇『十二夜』▷2.5次元もミュージカルも、全ジャンルや...

一覧はこちら

BUTAKOME動画チャンネル

連載☆エンタメコラム

2020/02/06

【中井美穂のヅカヅカ行くわよ♪ Vol.46】麻実れい×中井美穂 S..

open

close

Profile

ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2020/02/29NEW

【早霧せいなのビタミン“S”】其の二十三.「影響しあうこと」

open

close

Profile

長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

2019/06/07

尾上松也さんSpecialインタビュー▷第二回『百傾繚乱』8月24日..

open

close

Profile

1985 年生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。1990 年 5 月、「伽羅先代萩」の鶴千代役にて二代目 尾上松也を名のり初舞台。近年は立役として注目され、2015年より、次世代の歌舞伎界を担う花形俳優が顔を揃える「新春浅草歌舞伎」に出演し、「仮名手本忠臣蔵」早野勘平、「義経千本桜」狐忠信、「義経千本桜 吉野山」佐藤忠信 実は 源九郎狐などの大役を勤める。一方、2009 年からは歌舞伎自主公演 「挑む」を主宰している。

歌舞伎の以外でも、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2013)ベンヴォーリオ役、「エリザベート」(2015)ルイジ・ルキーニ役、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版のマウイ役、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)今川氏真役、初の主演ドラマ「さぼリーマン甘太朗」等、活躍の場を広げている。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト

NYから直送!「最新ブロードウェイミュージカルレポート」

ブタコメ編集部

関連サイト

  • LIVING
  • CITY LIVING
  • あんふぁん