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落語「J亭」

広瀬和生の「J亭を聴いた」(平成29年12月分)<90>

2017/12/11


J亭スペシャル_1419

12月1日(金)、「J亭落語会 桃月庵白酒独演会」。
演目は以下のとおり。

桃月庵はまぐり『湯屋番』
桃月庵白酒『万病円』
桃月庵白酒『時そば』
~仲入り~
柳家ほたる『湯屋番』
桃月庵白酒『おかめ団子』

JTホール最後の白酒独演会
開口一番は白酒の一番弟子はまぐりが金原亭のお家芸ざるや』を、先代馬生や五街道雲助と同じく「金庫ごと持っておいで」まで。ちなみに2016年1月のこの会で白酒はその先まで演って「叩いたって潰れるようなざる屋じゃございません」でサゲた。

白酒の一席目は、「権力を持っている人間は周りにとって厄介な存在」ということを実体験に絡めたマクラで語ってから『万病円』へ。江戸の町人にとって、権力を笠に着る侍は面倒くさくて迷惑なもの。この噺の主人公はまさにその典型。銭湯では湯船でフンドシを洗って湯銭も踏み倒し、餅菓子屋では小僧に対して屁理屈を押し通して十六文の勘定を四文しか払わない。この横柄な侍が紙屋で一本取られ、「江戸の仇を長崎で」と薬屋の貼り紙に難癖を付けたものの、店主の機転にギャフン、というのがこの噺。「万病に効くとあるが、病は四百四病と言う。万もあるか」という言いがかりに対して店主は「疝(千)気」「産前(三千)産後」などとシャレで数え上げていく。白酒『万病円』では、店主の「百日咳」に対して侍が「風邪は引くものだ、百を差っ引くぞ」と反撃、それに対して「臆(億)病というものがございます」と返すと「それは病ではない、足すわけにはいかん」「億がダメなら腸(兆)捻転がございます」でサゲる。本来のサゲ「腸満(兆万)があります」で、三代目三遊亭金馬はそれで演っていた。「腸捻転」は三遊亭圓窓が考案したサゲ。

白酒の二席目は『時そば』。一文かすめた奴の真似をしようという男が出会う蕎麦屋の情けなさが半端じゃない。男が呼んでも「借金取りかと思って」逃げて行くこの蕎麦屋、「家では子供がひもじいよぉ、ひもじいよぉと泣いて……このままじゃみんなで首くくるしかねぇな、って……相談に乗ってもらえますか」と愚痴をこぼし、男が「悪い時もあればいいときもあるよ、ほら、飽きずにやんなきゃダメだけよ、商いっていうくらいだから」と励ますと「飽きずにやってこのザマですよ」と吐き捨てる。屋号は「虎屋」。汚い丼は汁が漏れないのが不思議な「はてなの丼」。汁が冷たいのは急かした客が悪い、出汁は「怖くて訊けない」、太くてベトベトの麺、麩を薄く切る技術を麺に活かさない「芸惜しみ」……。『時そば』はいろんな演者が二人目の蕎麦屋の酷さを工夫していて、白酒もやはり独特なアレンジを施しているが、その蕎麦屋の酷さ以上に客のリアクションの可笑しさが際立っているのが白酒の見事なところだ。

仲入り後は柳家権太楼一門の二ツ目、柳家ほたるが『湯屋番』を「軽石で顔こすっちゃった」まで。若旦那のキザなキャラのデフォルメが特徴的だ。この若旦那が持ってきた手紙の「名代の道楽者ゆえ要注意」ってところに赤で二重に線が引いてある、というのは笑った。

白酒の三席目は『おかめ団子』。五代目古今亭志ん生の演目で、舞台となる飯倉片町の「おかめ団子」は実在した団子屋だが、もちろん実話ではない。

毎日おかめ団子を一つずつ買って帰る大根屋。病気の老母が団子を楽しみに待っているという。この大根屋、たまたま目にしたこの団子屋の一日の儲けを夜中に思い出し、「あの金があれば親孝行ができる」と魔がさして、開いていた裏木戸から団子屋の庭に忍び込む。と、娘のおかめが首をくくろうとしてるのを発見、大声で助けを呼ぶと、両親が大慌てで起きて来た。おかめは父親が決めた縁談が嫌で死のうと思ったのだという。

団子屋の主人に「それにしてもなぜこんな夜中にここへ?」と訊かれた大根屋、親孝行ができないので盗みに入ったと告白する。団子屋の主人は大根屋に同情し、「娘の命の恩人だ」と五両を渡して帰した。すると母親が「おかめと話したんですが、いっそあの大根屋さんにうちに入ってもらいましょう。おかめも承知です」と主人に提案、大根屋の人柄を知る主人も賛成する。「何よりあの人なら私たちを大事にしてくれますよ」「そうかい?」「そうですよ、商売が大根屋、孝行(香香)者です」でサゲ。

ここでサゲるのではなく「大根屋が養子に入って繁盛した」と人情噺らしい終わり方にする演り方もあるが、「盗みに入った大根屋を婿養子に」という展開が急なだけに、ここでストンと落としたほうが合点がいく。また、白酒は「以前からおかめは大根屋の人柄を知っていて縁談に納得している」ことを強調していて、これは気持ちいい。『井戸の茶碗』でも白酒は千代田卜斎の娘と高木がお互いに惚れていたという設定にしているが、こういうところに白酒のセンスの良さを感じる。そしてまた、田舎言葉でしゃべる大根屋が実に実直そうで、この展開に無理がないと思えるのが白酒ならでは。今年蔵出ししてきた演目だが、楽しい噺に仕上がった。

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2018/08/10

岩井秀人×中井美穂 スぺシャル対談▷ハイバイ15周年記念『て』『夫婦..

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2018/07/31

【早霧せいなのビタミン“S”】其の四 .「幸せを届けること」

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

2018/07/17

尾上松也のエンタメ異文化交流録▷ミュージカル『モーツァルト!』

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/08/06

📹【加藤和樹のエンタメCafe 番外編】〈大阪・梅田..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

【Official HP】 公式サイト
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2018/07/23

【柳亭こみちのちょいと一回のつもりで聴いて】Vol.4「シュークリー..

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東村山市出身。2003年、七代目柳亭燕路に入門。前座名「こみち」。2006年、「こみち」のまま二ツ目昇進。2017年、「こみち」のまま真打昇進。歌って踊れて落語のできる女、老若男女から友達になりたいと思われるような噺家を目指している。亭主は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。漫才師と落語家の夫婦は史上初。二児の母として真打に昇進したのも、落語史上初。「落語坐こみち堂」「なかの坐こみち堂」をはじめ、日々多数の落語会に出演し、ナレーション、講演活動、執筆活動、学校寄席への出演も多々。こみちが大きな出世街道となるよう、鋭意奮闘中
【Official HP】 こみちの路

2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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