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落語「J亭」

広瀬和生の「J亭を聴いた」第2回大手町二人会 三三・一之輔(平成30年7月分)<94>

2018/08/29



「J亭スピンオフ企画 隔月替わり二人会」、
7月26日(木)「三三・一之輔」二人会。演目は以下のとおり。

桂宮治『熊の皮』
柳家三三『茄子娘』
春風亭一之輔『青菜』
~仲入り~
春風亭一之輔『麻のれん』
柳家三三『忠治山形屋』

開口一番を宮治が務めるとは豪華だ。女房の尻に敷かれた甚兵衛さんが主役の『熊の皮』、女房が甚兵衛に口上を教える際に「意味はどうでもいい、音で覚えて!」と言うのは笑った。その「音で覚えた」口上のあまりのうろ覚えぶりに困惑した先生が「ハイ書生さん全員集合! 今日は一人の知恵ではわかりません。全員協力体制で謎を解きます」と書生を集め、もう一度詳しく聞いてみて「点と点が線でつながりました」と喜ぶのも楽しい。

三三の一席目は『茄子娘』。東海道戸塚の宿から一里ほどの鎌倉山の山間にある寺の和尚が丹精込めてナスを育てながら「大きくなったら菜(さい)にしてやる」と言ったのを「妻(さい)にしてやる」と受け取った茄子の精が若く美しい女性の姿で現われ、和尚はつい誘惑されてしまい「不邪淫戒」を犯してしまった。夜が明けると夢かと思いつつ「修行が足りぬ」と悔いて旅に出た。5年後、寺に戻ってみると幼い娘が「お父様」と声を掛けてきた……。

入船亭扇橋の演目で、その一門以外では三三の兄弟子、柳家喜多八が演っていたのが印象深い。三三『茄子娘』は端正な語り口の中に柔らかさがあって実に心地好い。5年後に戻ってきた場面はいかにも夏の畑の風景が見えてくるようだ。

続いては一之輔がお馴染みの『青菜』を。コップ越しに周りを見て景色が歪むのを喜んだり鯉の洗いと共に出された酢味噌を舐めて「これだけで五合飲める」と喜んだりする植木屋が可愛い。「御懲役……じゃない、御教育」というお約束の言い間違いの後に「懲役じゃ大変だよ、番号で呼ばなきゃいけない」と呟くのがバカバカしくていい。「その名を九郎判官」の隠し言葉に「その場で~!?」と心底感心する植木屋。それにしても「うちの女房はタガメに似てる」っていう発想はどこから出てくるのか……。

そのタガメの女房を「小町になれ」とザンバラ髪にして「お屋敷の隠し言葉」を再現しようとする後半のハジケ方は一之輔の独壇場。建具屋の半公を呼び込もうと「あーこれこれぇ~」と声を掛けるだけで既に可笑しい。「コップでおあがり」「シャケ缶じゃねぇか!」というのも凄い。菜のお浸しが嫌いな半公が「売られた喧嘩は買うぜ! 意地でも食ってやる持ってきてみろ!」と言うと「持ってくるよ! ……無いけどな」と何故かドヤ顔な植木屋、「♪これよ! ♪奥や!」に合いの手を入れる半公、グショグショになってオッパイ透けちゃってる女房を見て「あっ、タガメだっ!」……相変わらず凄い。

仲入り後は『麻のれん』。これで三席続けて夏の噺だ。これも入船亭扇橋の演目で、一之輔は二ツ目の頃から演っている。『青菜』に続いて柳蔭の登場だ。杢市が食べる枝豆が実に美味しそう。「直しってのは大阪が本場なんですってね。上方では柳蔭って言うんだって近所の植木屋が騒いでました」に笑いが起こる。奥の座敷に女中が手を引いて連れて行くと言うのを意地を張って断わって一人で行くというときの「嫁入り前の娘さんの手を触るなんてもったいない限り」という台詞がいい。杢市が屋敷内の間取りを事細かに描写するのも楽しい。

麻の暖簾の存在に気付かず蚊帳の外に寝る杢市が、布団もなければ水差しも置いてないのを、女中のお清に「お嫁に行かないの」とか「器量がいい」とか言ったせいでしくじったと早合点するのは、布団が敷いていないという状況に杢市が甘んじる不自然さに説得力を与えていて秀逸だ。「ヒデェな~、でも謝らないぞ俺は!」と独白するのも杢市の強情な性格を物語っている。やぶ蚊に刺されまくるのを見てるとこっちまで痒くなってくるが、一之輔の演じる杢市は、飲み終わった直しを最後の一滴まで手につけて頭や顔に撫でつけていたので、蚊もなおさら集まってきやすいのだろう。皮肉なオチは単純に可笑しいというより目の不自由な杢市の悲哀を感じさせるが、シリアス過ぎずカラッと受け止められるのが、一之輔『麻のれん』の魅力だ。

三三のトリネタは講釈ネタで『忠治山形屋』(『山形屋乗り込み』)。博奕打ちで十手持ちで女郎屋もやっている山形屋藤造、年貢の金に困って娘を売りに来た老人に渡した五十両を、手下に命じて奪い返した。この悪行を聞いた国定忠治が山形屋に乗り込んで親子を助けてやる。「十手を預かりながら陰で悪事の限りを尽くしている悪党を忠治が成敗する」という勧善懲悪ストーリー、初めは田舎者を装って下手に出た忠治が「もう勘弁ならない」とばかりに正体を明かして山形屋を脅しつけるというのもお約束ながら実にスカッとする展開。それをまた三三が実に爽快な描き方をしてくれる。三三がこの『山形屋乗り込み』を演るのを初めて観たのは11年前のことだが、今の三三はあの頃よりも一層語り口に深みがあり、メリハリの付け方も堂に入っていて引き込まれる。こういう噺を演ると今の落語界では右に出る者は居ない、と言ってしまっていいだろう。さすがの一席でビシッと締めてくれた。お見事!

 

■□■BUTAKOME☆Information■□■
 
J亭 スピンオフ企画
白酒・三三・一之輔 隔月替わり 大手町二人会
 
会 場:大手町日経ホール

開演時間:19時

料 金:全席指定3,800円

※未就学児童入場不可
 
<次回公演>

[五]11月22日(木)
出演:白酒・三三

9月21日(金)10時より発売開始!

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<今後の公演予定>
※青文字はトリ
[六]2019年3月7日(木)
出演:三三・一之輔
発売予定:2018年11月下旬

[七]2019年5月16日(木)
出演:白酒・一之輔
発売予定:2019年3月上旬

[八]2019年7月25日(木)
出演:白酒・三三
発売予定:2019年5月中旬

[九]2019年9月19日(木)
出演:三三・一之輔
発売予定:2019年7月下旬

[十]2019年11月21日(木)
出演:白酒・一之輔
発売予定:2019年9月下旬

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■チケットぴあ http://pia.jp/t/
※電話予約:0570-02-9999

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企画・制作・主催:サンケイリビング新聞社

問合せ:サンケイリビング新聞社・事業部
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連載☆エンタメコラム

2018/09/14

中村七之助×中井美穂 スぺシャル対談▷10月歌舞伎座、11月平成中村..

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2018/09/21NEW

【早霧せいなのビタミン“S”】其の六.「太陽を浴びること」

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

2018/07/17

尾上松也のエンタメ異文化交流録▷ミュージカル『モーツァルト!』

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/08/06

📹【加藤和樹のエンタメCafe 番外編】〈大阪・梅田..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

【Official HP】 公式サイト
【Official blog】 公式ブログ

2018/08/30

【柳亭こみちのちょいと一回のつもりで聴いて】Vol.5「噺家とお茶」

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東村山市出身。2003年、七代目柳亭燕路に入門。前座名「こみち」。2006年、「こみち」のまま二ツ目昇進。2017年、「こみち」のまま真打昇進。歌って踊れて落語のできる女、老若男女から友達になりたいと思われるような噺家を目指している。亭主は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。漫才師と落語家の夫婦は史上初。二児の母として真打に昇進したのも、落語史上初。「落語坐こみち堂」「なかの坐こみち堂」をはじめ、日々多数の落語会に出演し、ナレーション、講演活動、執筆活動、学校寄席への出演も多々。こみちが大きな出世街道となるよう、鋭意奮闘中
【Official HP】 こみちの路

2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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