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落語「J亭」

広瀬和生の「J亭を聴いた」第5回大手町二人会 白酒・一之輔(平成30年11月分)<96>

2018/12/06



「J亭スピンオフ企画 隔月替わり二人会」、
11月22日(木)「白酒・三三」二人会。演目は以下のとおり。

三遊亭伊織『都々逸親子』
柳家三三『橋場の雪』
桃月庵白酒『百川』
~仲入り~
桃月庵白酒『つる』
柳家三三『粗忽の釘』

開口一番を務めたのは三遊亭歌武蔵門下の二ツ目、三遊亭伊織。演じた『都々逸親子』は三代目三遊亭圓右の作品。いわゆる“芸協の新作”だが落語協会の演者にも伝わって、今では半ば古典となっている。国語の授業がきっかけとなって学校で都々逸が流行っていると金坊が言うと、父親が「自分は都々逸チャンピオンだった」と言って都々逸を作ってみせるが、金坊のほうが圧倒的に上手い…という噺。

三三の一席目は『橋場の雪』。うたた寝をしていた若旦那を起こした奥方が「どんな夢を見ていたの?」と尋ね、「橋場の渡しで美女と出逢い、向島で用を済ませて戻ってくるとその女が待っていたので家に行き、布団に入って横になると女が入ってきた…というところで起こされた」と若旦那が話すと、その夢に嫉妬した奥方が大騒ぎする、という噺で、人情噺『松葉屋瀬川』が落語化されたもの。『橋場の雪』を初代三遊亭圓遊が改作した『夢の後家』をさらに八代目桂文楽が『夢の酒』に作り替えて演じたため、よく似た噺の『夢の酒』のほうがポピュラーになった。『橋場の雪』は三三が「発掘した」と言ってもいい演目だ。夢の内容を若旦那が延々と語る場面がダレないのは三三の優れた話術があればこそ。元ネタが『松葉屋瀬川』だけに「向島で瀬川花魁が待っている」というのがもともとの『橋場の渡し』だが、三三は単に「向島でお客様が待っている」としている。「定吉がまた舟を漕ごうとしています」というサゲは初代圓遊が考案したもの。

白酒の一席目は日本橋浮世小路の料理屋「百川」に来た奉公人の百兵衛が河岸の若い連中との間でドタバタ劇を繰り広げる『百川』。田舎者の演じ分けが上手い白酒ならではの「百兵衛の可愛さ」が白酒版『百川』の魅力。百兵衛が「主人家の抱え人」と自己紹介したのを「四神剣の掛け合い人」と聞き違えた河岸の男が百兵衛に慈姑のキントンを呑み込ませて帰らせた後、仲間に「あの男はわざとああやっているが実はすごい人なんだ」と説明するくだりで、「そうかい?」と疑う男が「源ちゃん、そう?」と訊くと源ちゃんがよく通る声で「ああ、間違いねぇ」と答える、というやり取りが繰り返し出てきて、これがなんとも可笑しい。主人家の抱え人だとわかって「違うじゃねェか」と言われた源ちゃんがよく通る声で「ああ、間違ぇた」と平然と言うのが爆笑を呼ぶ。常盤津の歌女文字(かめもじ)という師匠を読んで来いと言われたのに医者の鴨地(かもじ)先生を呼んできてしまった百兵衛が河岸の男に「間抜け!」と言われると「かめもじ…かもじ…マヌケでねぇ、“め”が抜けとる」というのが白酒のサゲ。

仲入り後、白酒が演じたのは『つる』。八五郎がご隠居に「鶴は昔は首長鳥と呼ばれていた」と教わるお馴染みの噺だが、白酒『つる』の可笑しさは格別だ。仲間内で「どうして鶴は日本を代表する名鳥なのか、ご隠居に聞きに行こう」ということになったけれども、全員ご隠居が大嫌いなので押し付け合ってジャンケンで負けてイヤイヤ来た……と得々と話す八五郎のキャラは白酒ならでは。「首長鳥がツルになったわけ」を教えた後、自分で言っておきながらあまりにもくだらない駄洒落なので照れ笑いをし続けるご隠居の描写も大いに笑わせる。

三三のトリネタは『粗忽の釘』。引っ越しが終わった場面から始めたが、これは前半をカットしたのではなく、三三のいつもの演りかた。粗忽者の亭主はそれまで「箪笥を背負ってウロウロしてた」のではなく、ただ「鉄瓶を持ってグルグル廻ってた」だけなのである。釘を壁に打ち込んだ後、向かいの家に行ったりしながらようやく隣家に行った亭主は、女房との馴れ初めからデキちゃったところまで嬉々として語った後でトーンを落として「どうして女ってのはああ強くなっちゃうのかね…涙で枕を濡らす夜も…」と言い始める。亭主が尻に敷かれてるほうが上手くいくと仲間に言われてそのとおりにしてみたら、なるほど夫婦仲は丸く収まってる、「それもひとつの夫婦の形かも……と思ってるんですよ……い、ま、は」としみじみ語った後、万感の思いを込めて「いま、幸せです」と呟く、ここが三三『粗忽の釘』のハイライト。いったん帰ったこの亭主が再び現われると今度は「釘が出てますかって訊きに来たのにアナタは何にも教えてくれない!」とキレるのも可笑しい。この亭主に来られて困惑した向かいの家の女房が町内に回覧板を廻していたので隣家の女房はこの男が自分の隣人だと知っていた、というのも笑える。壁の向こうで「トントーン」と言いながら自分の頭を叩く亭主のマヌケさも三三が演ると楽しさ倍増。最後にまた来た亭主が「初めまして」と挨拶するのは『粗忽の使者』や『松曳き』を思わせるバカバカしさ。冒頭の夫婦の会話からサゲに至るまで全編に三三独自の演出が施されて実に面白い『粗忽の釘』だった。

 

■□■BUTAKOME☆Information■□■
 
J亭 スピンオフ企画
白酒・三三・一之輔 隔月替わり 大手町二人会
 
会 場:大手町日経ホール

開演時間:19時

料 金:全席指定3,800円

※未就学児童入場不可
 
<次回公演>

[六]2019年3月7日(木)
出演:三三・一之輔
→予定枚数終了しました

 
<今後の公演予定>
※青文字はトリ
[七]2019年5月16日(木)
出演:白酒・一之輔
発売予定:2019年3月上旬

[八]2019年7月25日(木)
出演:白酒・三三
発売予定:2019年5月中旬

[九]2019年9月19日(木)
出演:三三・一之輔
発売予定:2019年7月下旬

[十]2019年11月21日(木)
出演:白酒・一之輔
発売予定:2019年9月下旬

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■チケットぴあ http://pia.jp/t/
※電話予約:0570-02-9999

■オフィスエムズ http://www.mixyose.jp/
※電話予約:03-6277-7403(10:00~17:00)

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企画・制作・主催:サンケイリビング新聞社

問合せ:サンケイリビング新聞社
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2018/10/10

【中井美穂の幕内対談】Vol.4 殺陣師・栗原直樹さん ▷明日いよ..

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2018/11/29

【早霧せいなのビタミン“S”】其の八.「旬なものを食べること」

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

2018/10/11

尾上松也さんに直撃!「究極のエンターテインメントでランダムスターの人..

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/08/06

📹【加藤和樹のエンタメCafe 番外編】〈大阪・梅田..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

【Official HP】 公式サイト
【Official blog】 公式ブログ

2018/11/20

【柳亭こみちのちょいと一回のつもりで聴いて】Vol.7「女のお喋り」

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東村山市出身。2003年、七代目柳亭燕路に入門。前座名「こみち」。2006年、「こみち」のまま二ツ目昇進。2017年、「こみち」のまま真打昇進。歌って踊れて落語のできる女、老若男女から友達になりたいと思われるような噺家を目指している。亭主は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。漫才師と落語家の夫婦は史上初。二児の母として真打に昇進したのも、落語史上初。「落語坐こみち堂」「なかの坐こみち堂」をはじめ、日々多数の落語会に出演し、ナレーション、講演活動、執筆活動、学校寄席への出演も多々。こみちが大きな出世街道となるよう、鋭意奮闘中
【Official HP】 こみちの路

2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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