BUTAKOMEステージレビュー<劇場に行かねば!>

【ゲキネバ!】番外編・韓国ミュージカル『ベン・ハー』

2017/12/22


 

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ユダ役 カイさん
©CHUNGMU ARTS CENTER, NEW CONTENTS COMPANY

 

ステージ雑感「ゲキネバ!」
番外編・韓国ミュージカル『ベン・ハー』


 

 
劇場へ行かねば! 略して『ゲキネバ!』、大変ご無沙汰してしまいました。前回が『デスノート THE MUSICAL』台湾公演レポの番外編で、今回も海外公演レポの番外編。番外編ばっかりやないかーい! はいっスミマセン、新年には志も新たに本編リスタートさせますので! と、ひとり問答を終えたところでさっそく。今回は、今年8月24日から10月29日まで、ソウル・忠武アートセンター大劇場にて上演された韓国オリジナル・ミュージカル『ベン・ハー』について振り返りたいと思います。

 

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この作品は、日本でも翻訳上演されて好評を博したミュージカル『フランケンシュタイン』を始め、『ジャック・ザ・リッパー』『三銃士』などを手掛けている韓国ミュージカル界のヒットメーカー、ワン・ヨンボムさん(脚本・演出)とイ・ソンジュンさん(音楽)による新作舞台。韓国のクリエイターは、世界的に知られた人気小説を素材に創作ミュージカルを作るのが本当に上手いなあ~とつねづね思うんですよね。別クリエイターによる舞台だと、『シャーロック・ホームズ』『アルセーヌ・ルパン』なども然り。そして今回、ヨンボムさんとソンジュンさんの最強タッグが着手したのが、ローマ帝国時代を背景に描かれた壮大な歴史ドラマ、ルー・ウォーレスが1880年に発表した小説『ベン・ハー』でした。

 

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ユダ役 カイさん
©CHUNGMU ARTS CENTER, NEW CONTENTS COMPANY

作品については、1959年に公開されてアカデミー賞を総ナメにしたウィリアム・ワイラー監督による映画、また2016年にもティムール・ベクマンベトフ監督によって映画化されたことでご存知の方も多いでしょう。帝政ローマの世、ユダヤ人貴族の青年ユダ・ベン・ハーの波乱万丈な半生を、救世主イエス・キリストとの数奇な出会いをからめて描いた一大叙事詩です。駆け足で大筋をご紹介しますと……。

幼馴染みのメッサラと嬉しい再会を果たすも、お互いがローマとユダヤという対立関係にあることに苦悩するユダ。ある事故の冤罪で捕えられたユダは、メッサラの見殺しを受け、奴隷の身分へと堕ちていきます。母ミリアムと妹ティルザ、そしてほのかな恋心を抱いていた使用人エスターとも離れ離れとなり、長い年月、過酷な苦役を強いられることに。もはや息果てるという瞬間、ユダに助けの手を差し伸べる一人の男(キリスト)の存在や、復讐心と故郷への熱き思いによってユダは運命的に苦難を逃れ、ローマ軍人の養子となって第二の人生をつかみ取ります。そして戦車競技の選手となって、因縁のメッサラと命をかけた激突を展開することに……。

 

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(写真前方・左)ユダ役 カイさん
©CHUNGMU ARTS CENTER, NEW CONTENTS COMPANY

スイマセン、ホントに駆け足でした。大雑把に書いてもこのようにめくるめく展開となっていて、映画の記憶も薄れかけている筆者はストーリーについていけるかな〜と心配もしたのですが、そこはさすが、韓国ミュージカル界の精鋭チームによる自信作! 目の前の光景を追うだけでドキドキ、ビックリ、ウットリ、ジンワリ……と感情を揺さぶられっぱなしの160分(休憩20分含む)が過ぎていきました。豪華で巧妙な仕掛けが施されたセットの中で、ドラマチックなメロディに乗せて圧巻の歌唱を轟かす俳優の皆さんを凝視せずにはいられない! 隅から隅まで作り手の情熱が注がれた、“分厚い舞台”といった印象です。

 

ユ・ジュンサンさ

ユ・ジュンサンさん

パク・ウンテさん

パク・ウンテさん

カイさん

カイさん

主人公ユダ役はトリプルキャスト。『フランケンシュタイン』で“ビクター・フランケンシュタインと怪物”として対決していたユ・ジュンサンさんとパク・ウンテさん。そしてポップスとオペラのクロスオーバー歌手であり、また『モンテクリスト』などでミュージカル俳優としても認知されているカイさんの3人が扮しています。

 

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筆者はカイさん主演の舞台を観賞しました。韓国ミュージカルファンだとどうしても“ユ・ジュンサンのベテランの味わい、パク・ウンテのシャープな勢い”にまず惹かれてしまうと思うんです。でも今回は、知り合いの韓国演劇人から聞くカイさんの評判が、すこぶる良かったんですよね。
 
「ユダのキャラクターにとても合っている」というその言葉が、舞台を観て大いに納得できたのでした。若き青年の苦悩、葛藤、燃える闘争心といったものを、破格の歌唱力(こんなに歌が上手いとは…!と今頃驚嘆しているワタシを許してファンの人~)と鍛え抜いた肉体(素晴らしい胸筋とシックスパックでした…)で颯爽と見せてくれて、熱く見つめる観客の心中は「頑張って! 負けないで!」と大応援団結成モード。ところどころで迷いや脆さといった表情をのぞかせる若々しさが、とにかくいいんです!(川平慈英さん調)
 
メッサラも、単なる敵役として書かれているのではありません。彼がその立場に立たざるを得なかった過去の経緯をヨンボムさんは細やかに綴っており、ユダとの壮絶な激突シーン、その結末には胸を突かれて……落涙。
 
メッサラ役もトリプルキャストで、筆者が観たのはパク・ミンソンさんでした。彼もカイさんの好敵手にふさわしい歌唱力の持ち主で、もう立ち居振る舞いがとっても漢! そして芝居が上手い! しかし、この人どっかで見たことあるわ~と思っていたら、なんと日本の『ミス・サイゴン』(2016~2017年)でジョン役を演じていたパク・ソンファンさんじゃないですか! この『ベン・ハー』からパク・ミンソンの名前で活動していたんですね。韓国の俳優さん、結構名前を変えちゃう人、多いんですよね。心機一転ということでしょうか。

ユダとメッサラの戦車競技のシーンは、ご覧になった人誰もが舞台『War Horse』を思い浮かべただろうと思います。精巧な馬の模型の迫力とプロジェクションマッピングの効果で、気分は一気にローマの巨大な戦車競技場へとワープ。衝突によってなぎ倒される戦車の車輪から火花が吹きあがる様に圧倒されるなど、とてつもない臨場感を味わいました。 
 
 
そんな骨太ドラマの中で、ローマ帝国の総督ピラトがとってもベタな金満スケベ親父……失礼、男色エロ親父……重ね重ね失礼、ま、つまりはイロモノキャラで出てくるところはご愛嬌で、彼の率いるお小姓軍団が絢爛豪華に歌い踊るシーンは、眼福以外の何モノでもありませんでした。キレッキレのアンサンブルの方々の精悍と甘さが程よくミックスした表情、艶かしくも切れ味鋭い身のこなし! こんな精鋭をよくぞ集めた! …と興奮冷めやらぬほどに、このお小姓ダンスのシーンは一見の価値、大アリです。
 
過酷な運命の荒波からの復活劇、葛藤の果ての勝利と、それによってさらに深まる傷、愛する家族との無惨な別れと感動の再会、信仰による救い……、要所要所で“星”の存在をキーアイテムに、時を越える共感がてんこ盛りの秀作舞台。おそらく早々に再演が決まると思いますので、ぜひチェックしていただきたいと思います。
 

その前に! カイさんがクワドロプル・キャストの一人として主演するミュージカル『ザ・ラストキス』が12/15から開幕しています!! 
 

 
日本でのタイトルは『ルドルフ・ザ・ラストキス』でしたね。2018年3月11日まで、LGアートセンターにて上演中ですので、ルドルフ皇太子に扮するカイさんもチェック必至でございます。

 

 
不定期連載の『ゲキネバ!』、新年からはまた日本の気になる舞台を追いかけます。ときどきお隣の国に飛んで、また番外編も登場するかも!? ぜひ次回もお楽しみに〜♪

 

写真提供/EMKミュージカルカンパニー

 
上野紀子(うえの のりこ)■
プロフィール
演劇ライター。桐朋学園芸術短大演劇科、劇団文学座附属演劇研究所卒。『シアターガイド』『BEST STAGE』など演劇情報誌のほか、公演プログラムにて執筆。韓国演劇に関心を持ち、『シアターガイド』では2004年から韓国演劇情報を約十年に渡り連載した。2008年、文化庁在外研修で一年間ソウルに留学。高麗大学韓国語文化教育センター定期課程修了。韓国演劇を気にかけながらも、現在は日本のステージシーンのほうを注視している。BUTAKOMEイベントで時々MCも頑張ってます♪

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■
 

ThelastKiss2017

©EMK Musical Company, MUSICAL The Last Kiss, 2017

Musical『The Last Kiss』

公演期間:2017年12月15日~2018年3月11日
劇場:LGアートセンター
上演時間:165分
料金:VIP席14万ウォン/R席12万ウォン/S席8万ウォン/A席6万ウォン

■ラビツアーでチケット発売中!
http://ravieweb.com/products/list.php?category_id=16

コンセプト映像

 

【メインキャスト】

皇太子ルドルフ

1. 2017 TLK_Kai
KAI
2. 2017 TLK_Jeon Dong-Suk
チョン・ドンソク
3. 2017 TLK_Jung Tack-Woon
チョン・テグン(VIXX レオ)
4. 2017 TLK_Suho
スホ(EXO)

マリー・ヴェッツェラ

5. 2017 TLK_Sophie Kim
キム・ソヒャン
6. 2017 TLK_Min Kyoung Ah
ミン・ギョンア
7. 2017 TLK_Luna
ルナ(f(x)

 
 

 

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連載☆エンタメコラム

2018/09/14

中村七之助×中井美穂 スぺシャル対談▷10月歌舞伎座、11月平成中村..

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Profile

ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2018/09/21NEW

【早霧せいなのビタミン“S”】其の六.「太陽を浴びること」

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

2018/07/17

尾上松也のエンタメ異文化交流録▷ミュージカル『モーツァルト!』

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/08/06

📹【加藤和樹のエンタメCafe 番外編】〈大阪・梅田..

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Profile

1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

【Official HP】 公式サイト
【Official blog】 公式ブログ

2018/08/30

【柳亭こみちのちょいと一回のつもりで聴いて】Vol.5「噺家とお茶」

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東村山市出身。2003年、七代目柳亭燕路に入門。前座名「こみち」。2006年、「こみち」のまま二ツ目昇進。2017年、「こみち」のまま真打昇進。歌って踊れて落語のできる女、老若男女から友達になりたいと思われるような噺家を目指している。亭主は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。漫才師と落語家の夫婦は史上初。二児の母として真打に昇進したのも、落語史上初。「落語坐こみち堂」「なかの坐こみち堂」をはじめ、日々多数の落語会に出演し、ナレーション、講演活動、執筆活動、学校寄席への出演も多々。こみちが大きな出世街道となるよう、鋭意奮闘中
【Official HP】 こみちの路

2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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