BUTAKOMEステージレビュー<劇場に行かねば!>

【ゲキネバ!】Vol.9 FREE TIME,SHOW TIME『君の輝く夜に』

2018/08/26


 

君の輝く夜に

撮影:内池秀人

BUTAKOMEステージレビュー
ステージ雑感「ゲキネバ!」
Vol.9 FREE TIME,SHOW TIME『君の輝く夜に』


劇場へ行かねば! 略して「ゲキネバ!」、長らくのご無沙汰でございました。不定期連載にしてもあまりに不定期過ぎるスパンで恐縮ですが、こんな調子で今後ものんびり続けていく所存。気を取り直して連載第9回目はFREE TIME,SHOW TIME『君の輝く夜に』を取り上げたいと思います。稲垣吾郎さん主演、そして劇団ラッパ屋を主宰する鈴木聡さん作・演出による、大人のロマンス・コメディ・ミュージカルです。8月3日から26日まで、京都劇場での公演でした。ハイ、京都まで、新幹線に乗って旅気分で行ってまいりましたよ♪ 京都駅直結の京都劇場は、天井が高く、スッキリ洗練された素敵空間。前の座席の人の頭がステージを邪魔しない客席の勾配も、ポイント高いです! 開演前にはすでに舞台奥で、音楽家・佐山雅弘さん率いるバンドの演奏が始まっていました。音の響きも文句なし! 早くも客席から手拍子が起きたりして、アットホームな雰囲気でワクワク開幕を待つことに。

 

稲垣さんと鈴木さんの主演&作・演出のタッグといえば、2012年から2年置きに上演してきた3本の舞台、『恋と音楽』シリーズでおなじみですね。音楽の佐山さんもその強力なブレーンの一人です。同シリーズではミュージカル界の人々が繰り広げるドラマを描いてきましたが、今回はちょっと方向転換。安寿ミラさん、北村岳子さん、中島亜梨沙さんという最強の歌姫たちに囲まれて、稲垣さんが演じる謎の男ジョージの、ひと夏の恋物語が展開します。
 

君の輝く夜に

(左より)北村岳子さん、安寿ミラさん、中島亜梨沙さん
撮影:内池秀人

 

物語の舞台は、国道沿いにあるアメリカン・ダイナーです。オーナーのライザ(北村さん)は、こんな名前だけど実は本名、高橋清子。ライザ・ミネリが好きだからこの呼び名にしたそうで。その店にふらりとやって来たジョージも、本名は森本譲治でれっきとした日本人。ダイナーの二階はホテルになっていて、宿泊客はニーナ(中島さん)。そして後にやってきたビビアン(安寿さん)も、このダイナーが気に入って泊まることに。ハイ、このお二人も、本名はそれぞれ蜷川宏美と日比野杏。外国人風の名前で呼び合うことで、異国情緒ただようオシャレな雰囲気を狙った……のかと思いきや、皆さんの歌声から聞こえてくるフレーズは「玉子とじうどん」やら「アジフライ」だったり。鈴木さんお得意の、いい案配の腰砕け感が軽やかな笑いを誘います。

 

君の輝く夜に

撮影:内池秀人

 
十年ぶりにこのダイナーを訪れたジョージは、もちろんワケありです。実は十年前に別れた恋人と、「十年後、またこの店で会いましょう」と約束していたんですね。そんなドラマチックなシチュエーションにいながら、ジョージは美人のニーナに心惹かれて、自分もダイナーの二階に泊まることにしちゃいます。そして自らを「めんどくさい女」と歌う魅惑的なビビアンにもそそられて……。このへんの「それはそれ」的な都合よろしい気の多さ、憎めない愛らしさは稲垣さんならでは。観客全員が「オイ」とツッコミながらも、頬を緩ませてジョージさんを許してしまうのですね。はたして元カノはやって来るのか!? ジョージとビビアン、はたまたニーナ、まさかのライザとの関係はどうなる!? 旅という非日常の空間で出会った男女4人のやりとりが、軽妙な歌とダンスで綴られていきます。

 

君の輝く夜に

(左より)北村岳子さん、安寿ミラさん、稲垣吾郎さん、中島亜梨沙さん
撮影:内池秀人

 
物語の中盤、インターミッションのように挟まれるのは、ちょっぴりゴージャスなショータイム。燕尾服へと装いを変え、ステッキを携えて再登場した4人は、名曲「ニューヨーク・ニューヨーク」で美声&ステップを披露。華やかな中にも皆さんのホンワカしたチームワークが感じられる微笑ましいひとときです。その後も、聴き覚えのある楽曲が次から次へと飛び出して、こりゃ楽しい〜♪ 筆者がとくに「おおおお!」と興奮したのは、稲垣さんが力みなく歌うギルバート・オサリバンの名曲「アローン・アゲイン(ナチュラリー)」。あるがままの自分でいても、自然と品の良さが浮かび上がる稲垣さんに、せつないメロディがピッタリとハマります。
 

君の輝く夜に

撮影:内池秀人

 

物語の後半は、オシャレで小粋なムードはそのままに、登場人物それぞれが“新たな一歩”を踏み出すまでの心の動きをじっくりと。安寿さん演じるビビアンは、情の熱さを内に秘めたクール・ビューティー。偶然を装ってこのダイナーにやってきたけれど、本当の目的はジョージの元カノに頼まれて、彼に会うためだったんですね。そんなのアリかい!と登場しない元カノに全観客の総ツッコミが入り(たぶん)、妙な役回りを引き受けたビビアンの人の良さに思わずため息。ま、彼女自身の好奇心もあるかも!? そんな面白い魅力を放つビビアンを、安寿さんが時に可愛く、時に惚れ惚れする漢っぷりを匂わせて体現。圧巻の歌声にも痺れます。
 
中島さんも、スポーツカーを乗り回し、セミ捕りや魚釣りに精を出す不思議美女ニーナを、ハツラツと演じていてとてもチャーミング。ライザを演じる北村さんは、ジョージをからかう言動がじんわり可笑しい、大人の女性の魅力を携えた鉄板のコメディエンヌ。思いっきり私感ですが、3人とも、同性に好かれるタイプの女性だな〜と思いましたね。そして、「この中でいったら私はビビアン」とか、「私、まさにライザなんだけど」と、観客が自分に近いキャラクターを見つける楽しさもある。
 
稲垣さん演じるジョージが、この3人それぞれに魅力を感じてちょっぴり心を寄せるけれど、あえなくスルーされてしまうオチも愉快です。ひと夏の奇妙な出会いに「やれやれ」といった調子で微笑む稲垣ジョージ…。おお、ゴローさん、いい表情するなあ!としみじみ見入ってしまいました。

 
ライザの「男と女は夢を見せ合ってナンボなのよ」の一言にけしかけられ、一時、ジョージは自分の虚飾の姿を元カノに知らせてほしいとビビアンに頼みます。でもやっぱり最後は、本当の自分をさらけだすことを選ぶんですよね。人間臭いアップダウンの描写に、鈴木さんの巧さが光り、愛あふれる視線が覗きます。今後もきっと、鈴木さんの演出と佐山さんの音楽で、稲垣さんの魅力をさらに進化させてくれるはず。ひと夏だけで終わってしまってはもったいない上質の大人のコメディ、“ジョージのその後”、期待します!

 

上野紀子(うえの のりこ)■
プロフィール
演劇ライター。桐朋学園芸術短大演劇科、劇団文学座附属演劇研究所卒。『シアターガイド』『BEST STAGE』など演劇情報誌のほか、公演プログラムにて執筆。韓国演劇に関心を持ち、『シアターガイド』では2004年から韓国演劇情報を約十年に渡り連載した。2008年、文化庁在外研修で一年間ソウルに留学。高麗大学韓国語文化教育センター定期課程修了。日韓演劇交流センター専門委員。BUTAKOMEイベントで時々MCも頑張ってます♪ いい歳して始めたフィギュアスケートも満身創痍で奮闘中。

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■

君の輝く夜に

 

FREE TIME,SHOW TIME『君の輝く夜に』

作・演出:鈴木聡
音楽:佐山雅弘

出演:稲垣吾郎
/安寿ミラ、北村岳子、中島亜梨沙

演奏:佐山こうた(pf.)  高橋香織(vln.) バカボン鈴木(b.)
三好“3吉”功郎(g.) 仙波清彦(perc.)

 
日程:2018年8月3日 (金) ~2018年8月26日 (日)
会場:京都劇場
料金:S席:10,000円 A席8,000円
※未就学児入場不可

 
※公演詳細は『君の輝く夜に』公式HP

 
 

 

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

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尾上松也さんSpecialインタビュー▷第二回『百傾繚乱』8月24日..

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1985 年生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。1990 年 5 月、「伽羅先代萩」の鶴千代役にて二代目 尾上松也を名のり初舞台。近年は立役として注目され、2015年より、次世代の歌舞伎界を担う花形俳優が顔を揃える「新春浅草歌舞伎」に出演し、「仮名手本忠臣蔵」早野勘平、「義経千本桜」狐忠信、「義経千本桜 吉野山」佐藤忠信 実は 源九郎狐などの大役を勤める。一方、2009 年からは歌舞伎自主公演 「挑む」を主宰している。

歌舞伎の以外でも、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2013)ベンヴォーリオ役、「エリザベート」(2015)ルイジ・ルキーニ役、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版のマウイ役、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)今川氏真役、初の主演ドラマ「さぼリーマン甘太朗」等、活躍の場を広げている。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト

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ブタコメ編集部

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