大原薫の観劇コラム

【大原薫の観劇コラム】Vol.7『ジャージー・ボーイズ』~これが日本のミュージカルの一つの到達点!〜

2018/09/18


中川晃教さん

中川晃教さん
写真提供 / 東宝演劇部

 
フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズの盛衰を描いて、読売演劇大賞最優秀作品賞など数々の賞に輝いた初演から2年。更なる高みを目指した『ジャージー・ボーイズ』再演はTEAM WHITETEAM BLUEという色の違うダブルキャストで、これが日本のミュージカルの一つの到達点となった。この感動をお伝えするべく、「大原薫の観劇コラム」が久々の発動!

 
音楽とドラマ。言うまでもなく、ミュージカルでの大事な二つの要素だ。どちらか一つの要素が優れたミュージカルは数々あるだろう。しかし、音楽とドラマの二つをどこまでも繊細に、かつダイナミックに追求して成功した稀有な例が『ジャージー・ボーイズ』だ。

 
ブロードウェイから直送! 大原薫のBwayミュージカルレポート 『ジャージー・ボーイズ』」で、ブロードウェイでの公演の模様(2016年)をレポートしたが、ブロードウェイ版はアメリカ人にとっての国民的なグループであるザ・フォー・シーズンズと観客との深い共有体験が基礎にあるもの。ヒットナンバーで綴る音楽劇という趣が強かった。

 
ザ・フォー・シーズンズというグループにそれほど馴染みのない日本での舞台化にあたり、演出の藤田俊太郎さんは「観客がザ・フォー・シーズンズの第5のメンバーであり、主役」という視点から作品を作り上げた。

 
作品冒頭、トミーフランキーが客席から登場するのは、「私たちの中から出てきた」という意味でとても象徴的。ザ・フォー・シーズンズのメンバーのそれぞれの心情や葛藤を丁寧に描き出し、マフィアとの関係やグループ内の軋轢もえぐり出して、人間ドラマとしてのリアリティを感じさせる。

そして、ヒットナンバーを次々に歌うというよりは心情に寄り添ったミュージカルナンバーとして歌を歌うことで、よりミュージカルらしさが生まれる。回り舞台や3階建ての装置を使って、スピーディで滑らかな舞台展開を見ているうちに、ザ・フォー・シーズンズを知らない、あるいは思い入れがない人でも、グループの始まりから終わりまでを共に体験しているような感覚になるのだ。そう、自分たちがザ・フォー・シーズンズを押し上げた、共に歩んできたという気持ちになる。その気持ちが最高潮に達するのはカーテンコール。劇場で販売されているJERSEY BOYSのロゴの入ったペンライトをザ・フォー・シーズンズの歌声に合わせて振るうちに、この観劇は体験になる。

今回の再演では、初演よりも精緻にメンバーの心情や関係性に迫る。たとえば、2幕のボブの言葉からニックの意志が決定的になった瞬間など、ドラマを明確に提示する。

 
『ジャージー・ボーイズ』のドラマとしての要が演出の藤田さんであるなら、音楽の要はフランキー・ヴァリを演じる中川晃教さん。圧巻の歌声が劇場を支配する。フランキー・ヴァリの役を演じるには独特のトワングという発声法をマスターして、ザ・フォー・シーズンズのメンバー・作曲家でありこの作品のプロデューサーであるボブ・ゴーディオによる歌声の審査を受けないといけない。中川さんは初演以来2年間、フランキーの歌唱法のトレーニングを続けて磨きをかけてきたという。

フランキーが初めて客席から登場して「シルエット~♪」と歌う、その一声の持つ「圧」がすごかった。2年前の初演でも素晴らしくて、読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞するほど評価されていた中川さんだったのに、その上があったのか! ということが驚きだ。さらに、少年から青年、壮年へ……という変化を演技にも歌声にも乗せ、フランキーの成長物語という側面を打ち出して、物語に深みを加える。

 
2幕のハイライトである「君の瞳に恋してる」を歌う直前、ステージに吸い込まれていきそうな錯覚に陥る。恐ろしいほどのパワーで客席を集中させるのだ。歌い始めて輝くミラーボールも、フランキーの歌声が回しているのではないかと思わせるほど。劇中の台詞にあるように「天使の歌声」が地上に降り注ぐ様を実感した。中川さんのフランキーの歌声の力は無限大だ。

 

<次のページ>
キーマンは海宝直人~グルーブ感が増したTEAM WHITE

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■
 

ジャージー・ボーイズ

ミュージカル 『ジャージー・ボーイズ』

翻訳: 小田島恒志
訳詞: 高橋亜子

演出: 藤田俊太郎

出演:中川晃教・中河内雅貴・伊礼彼方・海宝直人・矢崎広・福井晶一・spi

公演日程:9月7日(月・祝)~10月3日(水)

会場:シアタークリエ
 
公演詳細はコチラ
 
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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

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尾上松也さんSpecialインタビュー▷第二回『百傾繚乱』8月24日..

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1985 年生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。1990 年 5 月、「伽羅先代萩」の鶴千代役にて二代目 尾上松也を名のり初舞台。近年は立役として注目され、2015年より、次世代の歌舞伎界を担う花形俳優が顔を揃える「新春浅草歌舞伎」に出演し、「仮名手本忠臣蔵」早野勘平、「義経千本桜」狐忠信、「義経千本桜 吉野山」佐藤忠信 実は 源九郎狐などの大役を勤める。一方、2009 年からは歌舞伎自主公演 「挑む」を主宰している。

歌舞伎の以外でも、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2013)ベンヴォーリオ役、「エリザベート」(2015)ルイジ・ルキーニ役、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版のマウイ役、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)今川氏真役、初の主演ドラマ「さぼリーマン甘太朗」等、活躍の場を広げている。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト

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ブタコメ編集部

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