MICHIMARU劇評

【MICHIMARU劇評 第1回】ミュージカル『マリー・アントワネット』

2018/10/16


 

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マリー・アントワネット/笹本玲奈、フェルセン伯爵/古川雄大
写真提供/東宝演劇部

悲劇を多面的に描いた秀作

 
マリー・アントワネットといえば、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」の悪名高きフランスの王妃、という歴史が貼った〝汚名〟は払拭されているといっても良いのではないか。少なくとも日本の演劇ファンの間では。その最大の功績は、宝塚歌劇の人気を不動のものとした池田理代子氏の漫画「ベルサイユのばら」であることは論を待たないが、もうひとり、かの遠藤周作氏も悲劇の王妃を丁寧に描いた「王妃マリー・アントワネット」を残している。この小説に着想を得て2006年に日本で世界初演されたミュージカル『マリー・アントワネット』が新演出版として帝劇に帰ってきた。

 
韓国版のロバート・ヨハンソンの演出を〝逆輸入〟し、さらにブラッシュアップさせ、悲劇の王妃の生涯がより情感的に多面的に浮かび上がる結果となった。

マリー役に、日本で随一のマリー・アントワネット役者といえる花總まり、出産を経て舞台に帰ってきた笹本玲奈を配し、マリーと対になる貧しい少女、マルグリット・アルノーを日本のミュージカル界に欠かせない存在となったソニン昆夏美が務める豪華な顔ぶれ。
 
福岡公演を経て東京で幕が開けたばかりの作品を、笹本&ソニンのコンビ回に観劇した。

 
新演出版となり、物語はフェルセン伯爵がマリーの処刑を知らされるシーンから始まる。マリーの生涯について知っていても、悲劇に向かって突き進む物語は息が詰まるだけに、彼女を愛し、その死を悼む者の存在が最初に描かれるのは救いとなる。
 
フェルセンの歌に始まり、その後も歌、歌が続いて物語が進んでいく。伝えようという気負いがあるのか、せっかくのシルヴェスター・リーヴァイの流れるような美しい旋律より、区切られていく言葉が目立ったのがいささか残念だったが、オルレアン公の吉原光夫の堂々の歌唱以降、特に2幕に入ってからは気にならなくなった。笹本のマリーも前半はバタバタした印象を受けたが、2幕に大きく成長し、恋に生きる女、愛に生きる母としての姿が泣かせる。
 

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写真提供/東宝演劇部

 

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写真提供/東宝演劇部

 
マルグリット役のソニンは、力強さと繊細さを駆使し、まさにはまり役。ただ、同様にフランス革命に身を投じる庶民の娘を演じたミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』のソレーヌ役を思い出してしまうのが残念だ。パワフルな歌唱には定評があるものの、違った面も見たい。

マリーとマルグリットが互いの思いをぶつけ合う2幕の「憎しみの瞳」は特に聞かせる。笹本とソニンは声質が似ているのか、重なり合う歌唱は一本の線となり、物語終盤で明らかになる2人の関係性にも説得力を与える。これは他のキャストではどうなのか。他の組み合わせも聞いてみたい。

大きな収穫は、ミュージカル『モーツアルト!』のタイトルロールを経験して、どっしり大きくなったフェルセン伯爵役の古川雄大田代万里生とのWキャスト)。これまで外見からクールなイメージが強かったが、1幕最初でいきなり歌い上げる大役からして甘い声が際立つ。難しい旋律も音を外さないし、抑えの演技も魅せる。歌声にさらに伸びが加われば、ミュージカル俳優として進化を遂げるだろう。
 

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写真提供/東宝演劇部

 
歌唱で言えば、吉原はもちろんのこと、ルイ16世役の原田優一佐藤隆紀とのWキャスト)、ジャック・エベール役の坂元健児、レオナール役の駒田 一と男性陣は粒ぞろい。対する女性陣は、地声と裏声の使い分けに苦労しているように見受けられる。

リーヴァイの曲は、民衆蜂起に際しエレガントさすら漂う美しい旋律を用意したり、悲劇的なシーンなのにどこか明るいメロディだったりと複雑で高難度。斜めのラインを多用して不安定な足場を可視化してみせたセット(美術・松井るみ)も、人物を多面的に見せる舞台に見事にはまっている。

物語は「どうすれば世界は」と客席に問いかけながら幕を下ろす。民衆は正義の代弁者では決してなく、この世は正義と悪の二面では捉えられない。良い面と悪い面を併せ持つのが人間であり、また、人は変わっていくものだ。歴史を描くことで現代に問おうという深いメッセージ性が織り込まれた舞台は、日本人には受け入れられやすいのではないか。

11月25日まで、帝国劇場。名古屋、大阪公演あり。

 

 
道丸摩耶(みちまる まや)■
プロフィール
産経新聞記者。文化部、SANKEI EXPRESSの演劇担当を経て、観劇がライフワークに。
幼少時代に劇団四季の「オペラ座の怪人」「CATS」を見て以来、ミュージカルを中心に観劇を続けてきたが、現在は社会派作品から2.5次元作品まで幅広く楽しむ。
舞台は総合芸術。「新たな才能」との出会いを求め、一度しかない瞬間を劇場で日々、体感中。

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■

 

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ミュージカル『マリー・アントワネット』

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出:ロバート・ヨハンソン

出演:マリー・アントワネット:花總まり/笹本玲奈(Wキャスト)
マルグリット・アルノー:ソニン/昆夏美(Wキャスト)
フェルセン伯爵:田代万里生/古川雄大(Wキャスト)
オルレアン公:吉原光夫
ルイ16世:佐藤隆紀/原田優一(Wキャスト)

駒田一/彩吹真央/坂元健児/彩乃かなみ 他

日時:2019年10月8日(月・祝)~11/25(日)

会場:帝国劇場

料金:S席13,500円 / A席9,000円 / B席4,000円

 
※公演の詳細は公式サイト

 

名古屋公演 御園座 2018年12月10日(月)~12月21日(金) 
大阪公演 梅田芸術劇場メインホール 2019年1月1日(火)~1月15日(火)

 

 
 

 

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【中井美穂の幕内対談】Vol.4 殺陣師・栗原直樹さん ▷明日いよ..

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

2018/10/30

【早霧せいなのビタミン“S”】其の七.「時には力を抜くこと」

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

2018/10/11

尾上松也さんに直撃!「究極のエンターテインメントでランダムスターの人..

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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/08/06

📹【加藤和樹のエンタメCafe 番外編】〈大阪・梅田..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

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2018/09/30

【柳亭こみちのちょいと一回のつもりで聴いて】Vol.6「燃えよタンモ..

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東村山市出身。2003年、七代目柳亭燕路に入門。前座名「こみち」。2006年、「こみち」のまま二ツ目昇進。2017年、「こみち」のまま真打昇進。歌って踊れて落語のできる女、老若男女から友達になりたいと思われるような噺家を目指している。亭主は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。漫才師と落語家の夫婦は史上初。二児の母として真打に昇進したのも、落語史上初。「落語坐こみち堂」「なかの坐こみち堂」をはじめ、日々多数の落語会に出演し、ナレーション、講演活動、執筆活動、学校寄席への出演も多々。こみちが大きな出世街道となるよう、鋭意奮闘中
【Official HP】 こみちの路

2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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