MICHIMARU劇評

【MICHIMARU劇評 第3回】新感線☆RS『メタルマクベス』disc3 ▷回り続けて2年、どこを切っても新感線らしい「集大成」

2018/12/11


 

メタルマクベス

©2018『メタルマクベス』disc3/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

 

回り続けて2年、どこを切っても新感線らしい「集大成」

 
まさに「集大成」といえる仕上がりだ。

円形のステージを客席が回って楽しむアジア初のエンターテイメント劇場、IHIステージアラウンド東京(豊洲)で、2年近く走り続けてきた劇団☆新感線の同劇場最後の公演となる新感線☆RS『メタルマクベス』disc3が上演中だ。こけら落としとなった『髑髏城の七人』に続くステージアラウンド×新感線の第二弾作品で、出演者を入れ替えて同じ演目を数パターン上演する試みも、今回の「disc3」で最後となる。

 
メタルマクベスは、シェイクスピアのマクベスに、宮藤官九郎と(作)といのうえひでのり(演出)がメタルという意表を突いた味を加え、2006年に初演された。物語は、ジャパニーズ・ヘヴィ・メタル(ジャパメタ)がブームの1980年代と、フェンダー国、ギブソン国、新興勢力のESP国が火花を散らす2218年の荒廃した日本を行き来しながら進む。奇抜な設定の中に、マクベスのストーリーや台詞をしっかり織り込む手腕はさすが宮藤官九郎だ。

魔女の予言という不確実の極みは信じるのに、疑心暗鬼が募って周囲の人間を信じられなくなる人間の愚かしさ、大それた悪事に手を染めるのは悪党ばかりでないといったシェイクスピアの古典が持つ「芯」の部分を、バンドマンやファンといった現代の人物を使って親近感を持たせることに成功。また、戦争が続く近未来というSF的な別時代でマクベスの物語が進むことで、古典演劇が持つテーマの普遍性を際立たせた。
 

浦井健二

©2018『メタルマクベス』disc3/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

 
今回の見所はなんと言っても、脂の乗った30代の主役カップルだろう。主役のランダムスター/マクベス浦井役に、ミュージカルを中心に活躍する浦井健治。新感線に出るのは3回目でシェイクスピア作品も経験している浦井は、最後まで疾走感を途切れさせることなく、浮き沈み激しい役を柔軟に演じきった。
 

長澤まさみ

©2018『メタルマクベス』disc3/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

 
そして、ランダムスター夫人/ローズ/右近B役には、舞台で歌を披露するのはこれが2回目という新感線初出演の長澤まさみ。disc1で濱田めぐみ、disc2で大原櫻子といずれも歌唱力抜群の俳優が演じたランダムスター夫人を、妖艶に繊細に演じて好印象だ。長身から繰り出す力強い声はよく通り、歌詞も聞き取りやすい。弾けた役のそこかしこからのぞくきまじめさが悪女になり切れないランダムスター夫人の「弱さ」に重なり、夫に殺人をけしかける1幕より、2幕の転落していく様にすごみと哀れさを感じさせる。難しい役にリアリティーを持たせた。
 
柳下大

©2018『メタルマクベス』disc3/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

 
グレコ/マクダフ柳下役の柳下大は安定感があり、まっすぐな武人の役がぴったり。個性派揃いの出演者に埋もれない地に足がついた演技が光る。レスポールJr./元きよし役の高杉真宙は立ち姿が美しく、群舞の中心でも目を引く。あとは歌唱に一層の努力がほしいところだ。レスポール王/元社長役のラサール石井が緩急を自在に操り、舞台を引き締める。ここに橋本じゅん粟根まこと右近健一といったおなじみの劇団員が加わり、生バンドの爆音とともに新感線らしさを発揮している。
 
ラサール石井・高杉真宙

©2018『メタルマクベス』disc3/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

 
2つの時代を行き来する物語の設定は、別のセットが用意してある舞台まで客席が回っていくステージアラウンドの特性にぴったりはまり、本物のバイクを走らせたり巨大なスクリーンに映像を映し出すことで上下左右に動いているかのようにみせたりする飽きさせない工夫もある。一方で、暗転がないため約4時間(休憩込み)という上演時間は集中力を保つのが大変だ。そこも含めて新感線らしさではあるのだが。

何もない広大な埋め立て地に突如現れた劇場も、この2年の間に新市場が完成し、観光客の姿も目立つようになった。圧倒的な動員力を持つ新感線が、この地に客を呼び込み続けた功績は大きい。集大成となる今公演から感じたのは、長澤や高杉ら〝新顔〟を入れても、どこをどう切っても「新感線」にしてしまう力。これこそが劇団の充実ぶりを物語る。
 
浦井健二・長澤まさみ

©2018『メタルマクベス』disc3/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

 
その新感線は来年、劇団39周年を記念した公演で全国を回り、回る劇場は次の演目に引き継がれる。疾走感と爆音に包まれるメタルの世界を堪能できるのも年内いっぱいだ。公演は12月31日まで、IHIステージアラウンド東京。

 

道丸摩耶(みちまる まや)■
プロフィール
産経新聞記者。文化部、SANKEI EXPRESSの演劇担当を経て、観劇がライフワークに。
幼少時代に劇団四季の「オペラ座の怪人」「CATS」を見て以来、ミュージカルを中心に観劇を続けてきたが、現在は社会派作品から2.5次元作品まで幅広く楽しむ。
舞台は総合芸術。「新たな才能」との出会いを求め、一度しかない瞬間を劇場で日々、体感中。

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■
 
メタルマクベス
 
ONWARD presents
新感線☆RS『メタルマクベス』disc3
Produced by TBS
 

作:宮藤官九郎
演出:いのうえひでのり
音楽:岡崎司
振付&ステージング:川崎悦子
(原作:ウィリアム・シェイクスピア「マクベス」松岡和子翻訳版より)
 
出演:浦井健治、長澤まさみ、高杉真宙、柳下大、峯村リエ、粟根まこと、右近健一、橋本じゅん、ラサール石井
 
日程:11月9日(金)~12月31日(月)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)
料金:全席指定 13,500円 ※未就学児入場不可
 
※公演の詳細は公式サイト

 

 

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

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1985 年生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。1990 年 5 月、「伽羅先代萩」の鶴千代役にて二代目 尾上松也を名のり初舞台。近年は立役として注目され、2015年より、次世代の歌舞伎界を担う花形俳優が顔を揃える「新春浅草歌舞伎」に出演し、「仮名手本忠臣蔵」早野勘平、「義経千本桜」狐忠信、「義経千本桜 吉野山」佐藤忠信 実は 源九郎狐などの大役を勤める。一方、2009 年からは歌舞伎自主公演 「挑む」を主宰している。

歌舞伎の以外でも、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2013)ベンヴォーリオ役、「エリザベート」(2015)ルイジ・ルキーニ役、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版のマウイ役、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)今川氏真役、初の主演ドラマ「さぼリーマン甘太朗」等、活躍の場を広げている。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト

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ブタコメ編集部

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