MICHIMARU劇評

【MICHIMARU劇評 第5回】New Musical『Color of Life』▷幸せは「余白」の中にある

2019/05/09


 

カラーオブライフ001

東啓介さん、青野紗穂さん
撮影:岡千里

 

幸せは「余白」の中にある

「成長中」の舞台を見た。DDD青山クロスシアターで上演中のNew Musical『Color of Life(カラーオブライフ)』である。演出家・石丸さち子と音楽家・伊藤靖浩のタッグで米NYのオフ・オフ・ブロードウェイ演劇祭に乗り込み、最優秀賞を受賞(2013年)。日本では16年、17年に続き、今回が3回目の上演となる。上演時間約2時間、出演者2人の小品ながら、作り手の温かさと繊細さが普遍的な主題を包み込む不思議な魅力がある。
 
物語はシンプルだ。大震災をきっかけに絵が描けなくなった画家、和也(東 啓介)と、同性の恋人と死に別れたNY在住の女優、レイチェル(青野紗穂)が飛行機の隣席に乗り合わせたことから意気投合。一緒に暮らし始めるが、ビザの滞在期限90日が迫る。2人は果たしてどんな決断を下すのか。

 
「喪失」から立ち直る物語はいくつも見てきたし、この物語もとりたてて新味がある訳ではない。レズビアンというレイチェルの設定が、舞台上で描かれる7色のレインボーカラー(LGBTのシンボルカラー)とも重なり今風といえばそうだが、彼女の性的指向は物語の色を構成するひとつのピースであり主題ではない。さらに言えば彼女は日本人と米国人のハーフという設定で、二重の意味でアイデンティティーの狭間に苦しんでもいる。ただ、そんな苦しみを遠くから理解する母親の存在が描かれ、彼だけが彼女の苦しみを理解できたという設定にはなっていない。

2人の間に大きな事件が起きるわけでもなく、それでも物語から目を離せなくなるのは、喪失から立ち直る男女の物語を軸に、「時間」を縦糸、「色」を横糸として織り合わせることで、押しつけがましさのない新しい彩りが提示できているからではないか。
 
カラーオブライフ002

 
例えば、「三ヶ月でできること」という歌では「幸せの重さをいつ量るか。幸せの最中か、終わった後か」と問いかける。瞬間の最大値か、重ねていく累積値かを問うているのだが、災害により瞬間にして失うことを知った男と、病気で徐々に死へ向かっていく恋人を見送った女、いわば突然の不幸と予告された不幸の2つを明示してあることで、この歌詞の意味が生きる。

「OUR TIME」という歌では地球の誕生、米国の歴史を振り返り、長い地球の時間の中の「瞬間」の尊さを提示してみせる。広い視野から時間を語ることで、個人の人生など取るに足らないと言いたいのではない。幸せと不幸、さまざまな色と時間の積み重ねが人生だということをさらりと描いているのである。

 

東啓介
 
加えて、東と青野の全身から発せられるエネルギーと歌の力も魅力だ。声量のある2人の歌唱は安心して聞けるし、高音になっても負けない東、パワー勝負になっても負けない青野の組み合わせが気持ちいい。長身で舞台映えする東は受け身の役でありながら、のっている役者の勢いがある。青野は迫力ある歌唱に加え、真正面から全身で役にぶつかるストレートさに好感が持てる。「強さ」と「空元気」のさじ加減が難しい役ではあるが、レイチェルの繊細さの理解者として和也がいることで、2人が惹かれ合っていく理由がすんなりと受け入れられる。
 
青野紗穂
 

ステージに転換はなく、置かれているのは2脚のパイプ椅子、小道具入れにもなっている長椅子、和也が描いていく7枚の絵画くらい。今回から取り入れられた、ステージを真ん中に挟んで客席が向かい合う「対面客席」では、シンプルなステージを照らす照明が時に客席にも届く。そのたびにステージの奥に観客の顔が見え、顔の数だけ色の違う人生があると実感させられる。観客が舞台に彩りを添える「Color of Stage」になっているのだ。

この作品が描く「色」も「時間」も、ほんの一部だ。私たちは人生が7色だけでないことを知っている。2人が描いてきた7色の絵は幸せの積み重ねで、1枚の絵は幸せの断片であるが、本当に幸せなのは明日、新たな色が描かれる「余白」があるということだ。

 
NY上演、日本初演、再演、今回といずれも別のキャストが演じたことで、作品を作ってきた色はこれで8色になった。これから加わる新たな色によって、作品はまた成長していく。余白を埋める作業が人生であるように、この舞台もまた成長していくのだろう。「余白」は伸びしろであり、希望であり、何色にもなる可能性である。

5月27日まで、東京・渋谷のDDD青山クロスシアター。

 

道丸摩耶(みちまる まや)■
プロフィール
産経新聞記者。文化部、SANKEI EXPRESSの演劇担当を経て、観劇がライフワークに。
幼少時代に劇団四季の「オペラ座の怪人」「CATS」を見て以来、ミュージカルを中心に観劇を続けてきたが、現在は社会派作品から2.5次元作品まで幅広く楽しむ。
舞台は総合芸術。「新たな才能」との出会いを求め、一度しかない瞬間を劇場で日々、体感中。

 

■□■BUTAKOME☆Information ■□■
 
カラーオブライフ
 
New Musical 『Color of Life』
 
脚本・作詞・演出:石丸さち子
作曲・編曲:伊藤靖浩

出演:東 啓介 青野紗穂

日程:2019年5月1日(水)~5月27日(月)
劇場:DDD青山クロスシアター
料金:全席指定 8,000円 ※未就学児童入場不可

 
💡アフタートーク
5月10日(金)19:00公演 ゲスト:渡辺大輔

5月15日(水)19:00公演 ゲスト:松岡充

5月16日(木)19:00公演 ゲスト:前島亜美

5月17日(金)19:00公演 ゲスト:三津谷亮

5月22日(水)19:00公演 ゲスト:三浦涼介

5月23日(木)14:00公演 ゲスト:前山剛久

※司会進行は、10日・16日は青野紗穂、その他の回は東啓介が担当

 

お問合せ:ワタナベエンターテインメント
TEL 03‐5410‐1885(平日11:00~18:00)

 
※公演情報の詳細は公式サイト

 

 

 

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
【Official HP】 中井美穂 INFORMATION
【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
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1985年1月30日生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。
5歳で『伽羅先代萩』の鶴千代役にて、二代目尾上松也の名で初舞台。様々な分野で活躍し、歌舞伎公演以外にも活動の幅を広げている。09年より歌舞伎自主公演『挑む』を主催。歌舞伎公演以外の主な出演作に舞台:『ロミオ&ジュリエット』、『スリル・ミー』、『アンタッチャブル』、『男の花道』、『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』、TVドラマ「天地人」、「永遠の0」、映画「源氏物語」ほか。今年は6月からはミュージカル『エリザベート』にルイジ・ルキーニ役としての出演。8月8日には7回目の歌舞伎自主公演『挑む ~更なる幕へ勇みし気迫(こころ)~』を神奈川芸術劇場にて開催する。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト
【Official blog】松也日記(アメブロ公式)  
【自主公演サイト】挑むオフィシャルホームページ  

2018/08/06

📹【加藤和樹のエンタメCafe 番外編】〈大阪・梅田..

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1984年10月7日生まれ。愛知県出身。現在、LIVEや舞台・ミュージカルなどに参加幅広いファン層に支持され、歌手・俳優としても各界で注目を浴びている。

2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。
日本や韓国・台湾・中国でのCDリリースの他、自身のアルバムなどのTOURである「LIVE“GIG”TOUR」とラジオ公開放送のように投稿メールとリクエストを中心に構成されている「“KK−STATION”TOUR」や、日本武道館や日比谷野外音楽堂、アジア圏でも単独ライブを開催するなど精力的に活動。

同時に俳優としても活動しており、ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」「乾杯戦士アフターV」などに出演するほか、アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」「イケメン戦国」「B-Project」などで声優としても活躍。

近年はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』や『タイタニック』など大型ミュージカルにも出演。2016年4月・5月『1789 バスティーユの恋人たち』で帝劇初主演、9月~10月『真田十勇士』霧隠才蔵役に挑む。2017年1月ミュージカル『フランケンシュタイン』に出演決定。

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2018/11/20

【柳亭こみちのちょいと一回のつもりで聴いて】Vol.7「女のお喋り」

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東村山市出身。2003年、七代目柳亭燕路に入門。前座名「こみち」。2006年、「こみち」のまま二ツ目昇進。2017年、「こみち」のまま真打昇進。歌って踊れて落語のできる女、老若男女から友達になりたいと思われるような噺家を目指している。亭主は漫才師「宮田陽・昇」の宮田昇。漫才師と落語家の夫婦は史上初。二児の母として真打に昇進したのも、落語史上初。「落語坐こみち堂」「なかの坐こみち堂」をはじめ、日々多数の落語会に出演し、ナレーション、講演活動、執筆活動、学校寄席への出演も多々。こみちが大きな出世街道となるよう、鋭意奮闘中
【Official HP】 こみちの路

2018/02/23

【木ノ下裕一の歌舞伎の“ツボ”】 Vol.8『勧進帳』

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木ノ下歌舞伎 主宰
1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
『黒塚』(’13)、『東海道四谷怪談—通し上演—』(’13)、『三人吉三』(’14)、『心中天の網島』(’15)、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』』(’16)
2015年に再演した『三人吉三』にて読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。2015年3月に博士号(芸術博士)取得。

【Official HP】木ノ下歌舞伎 公式サイト
【Official Twitter】木ノ下裕一 Twitter

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