演劇・ミュージカル

『MITSUKO 愛は国境を越えて』 安蘭けい インタビュー vol.1

2011/04/01


19世紀末、日本人として初めて国際結婚を果たし、国境を越えて波瀾の生涯を遂げたクーデンホーフ・ミツコ。

没後70年となる今年、ミツコの生涯をドラマティックに描いたミュージカル
『MITSUKO 愛は国境を越えて』
世界初演を迎えます。

稽古開始を間近に控えた主演の安蘭けいさんに、作品にかける思いをうかがいました。

BUTAKOME

──昨年3月オーチャードホールにて行われた『MITSUKO』コンサートVer.で、凛とした美しさを放つミツコを演じていらっしゃいました。以前からミツコという女性についてご存知だったのでしょうか?

 “ゲランの香水のモデルになった女性”といった話は聞いていたんですけど、どのような人生を歩んできたのかまでは知らなかったんですね。
昨年のコンサートの時にいろいろ調べて、多くのことを知りました。最初は単純に、国際結婚なんて憧れるし、羨ましいし、女として幸せだろうな…なんて華やかなところばかりを見ていたんですが、彼女が感じた異国の地に行く不安や孤独などを知れば知るほど、簡単に“憧れる”なんて言っていた自分が恥ずかしく思えてきて。
今は、そういった不安や孤独を感じながらも異国の地で一生を遂げたミツコさんに、女性としての強さを感じています。とても尊敬しますね。

 7人もの子供を産んで、子供たちが成長する前に旦那様が亡くなって…。子育てをしながら、夫の遺産も守らなければならなかった。とても日本には帰れなかっただろうし、強くならざるを得なかったのだろうと思います。
それとともに、彼女は日本を旅立つ時に皇后陛下から扇を賜り、「日本人としての誇りを忘れずに生きてください」といった言葉をいただいているんですよね。
その言葉がずっと彼女の中にあったのではないかと思います。
日本人としての誇りを胸に、彼女はずっと異国で生きてきたのではないかと思うんですよね。

──ミツコの当時の生活を知るためにウィーンなどを訪れたとうかがいました。きっと多くの発見があっただろうと思います。

 はい、とにかく一番リアルに感じたのは“孤独”ですね。
まずミツコさんが初めて住んだ場所に行ったのですが、その時の気温がなんとマイナス17度で! 
もうとんでもなく寒かったんです。
ちょっと甘く考えていて、想像よりも17度低かった(笑)。
厳しい寒さと闘いながら、廃墟と化した城で撮影などをしました。
ミツコさんがいた当時、そこはオーストリア・ハンガリー帝国でしたが、現在はチェコなんですね。
寒さのせいか街には人影もなくて、陰湿な風景が広がっていて…。
きっとミツコさんが見ていた景色とあんまり変わらないんじゃないかな、なんて思いましたね。
春や夏に訪れたらもっと違った印象を受けたかもしれませんが、冬に訪れたことで、彼女の寂しさや孤独をひときわ感じられたと思います。
けっして夢や希望だけではない、現実の生活がそこにあったんだな…って。

 その後、ミツコさんが子供たちとともに移り住んだウィーンを訪ねて、最後には彼女が眠る墓地に行きました。お墓の前に立ったら、自然に涙があふれ出てきたんです。
事情があって旦那様とは別々のお墓に入っているんですよね。
最後に愛する人と一緒のお墓にいられなかったんだな…と考えたらなんだかすごく寂しくなってしまって。
彼女の寂しさ、孤独をリアルに肌で感じた旅でした。

──前作のミュージカル『エディット・ピアフ』もそうでしたが、実在した人物を演じるにあたって意識していることは?

 より史実に基づいて、本当にあったことをリアルに表現したいですね。上っ面だけでなく、その人が苦しんだり悶えたりした部分をきちんと伝えていきたい。
それが私が演じる意味でもあると考えています。
昨年のオーチャードでの公演の後に音楽活動も含めてさまざまなチャレンジをしたことや、『エディット・ピアフ』を経験したことで、ちょっとステップアップした自分が今、ここにいるはず。まったく違う感覚でミツコを演じられるのではと思っています。
17歳の少女時代から60代の晩年までを演じることになると思いますが、その時々の流れで彼女の強さがどんどん変化していきます。その強さの違いを表現できたら、と。
今回、初めて母親を演じることも新鮮ですね。
自分の母性がどのように表われるんだろうって、甥っ子を見ながら想像したりしています(笑)。

BUTAKOME

──音楽のフランク・ワイルドホーン氏、脚本・作詞・演出の小池修一郎氏との共同作業は、高い評価を受けた『THE SCARLET PIMPERNEL/スカーレット・ピンパーネル』以来ということで期待が集まっています。

 ワイルドホーンさんが作る曲は本当にパワフルでダイナミックでドラマティック。
しかも日本人に馴染みやすいという印象がありますね。でも歌いこなすにはなかなかの難曲で、『スカーレット』の時も大変でした。
今回の『MITSUKO』の曲もドラマティックですが、そこに日本人女性のイメージとしての柔らかさも加わっているような気がします。
前回、ワイルドホーンさんに「魂で歌ってくれるトウコの歌声が好きだ」と言って頂いたのがすごく嬉しかった。
技術面で追いつかないところを、自分の内から出る感情で表現して補わなければと思っています。

 小池先生はいつもストレートに言葉を投げかけてこられるから、そのたびにくそ~っと思って落ち込むんですが(笑)、それは図星を突かれるからなんですよね。
結果、自分を成長させて下さったと思うので、先生のことは信頼しています。
作り上げる段階での先生とのやりとりは、今から不安ですけど。覚悟して臨みます(笑)。

──国境を越えて愛を貫いたミツコのように、自分とまったく別の文化や価値観を受け入れることについて、ご自身だったらどう考えますか?

 私自身はとってもオープンで、どんな文化も尊重したいと思っていますし、受け入れることに何の抵抗もないですね。
ただその勇気があるかどうか…。
ミツコさんの時代を考えると、彼女はその時代の女性としては一風変わった考えを持った人だったんじゃないかな。
非常に興味深い人ですよね。

 私がいつも演じる時に思うのは、どんなに自分とかけ離れた人物でも、絶対に人間として共感できるところがあるということです。
そこをみつけないと演じることはできないし、お客様にも「その時代の人だから。
今じゃありえないよね」と思われて終わってしまっては残念です。
時が経った今でも共感できるところをみつけて、表現したい。
それをご覧になったお客様が「日本人でよかったな」と誇りに感じていただけたら嬉しいですね。

──今、東日本大震災という悲しく辛い出来事に直面した私たちは、日本人であることをあらためて深く考える時期にあるとも思えます。

 本当に。それこそ日本人の誇りを一番問われているような気がしますよね。
こういう事態になって、あまりにもちっぽけな自分にいったい何ができるだろう?と考えました。
やっぱりエンターテインメントを通して、少しでも夢や希望、感動といったものをお届けすることしかできない。
それを仕事として選んだのだから、使命と思って一生懸命にやるしかないと思っています。
『MITSUKO』“愛”が大きなテーマになっています。
ミツコさんの人生から、夫との愛、子供との愛、国との愛など、いろんな愛の形を受けとめていただければと思います。

◇ 取材・文/上野紀子
◇ 写真/吉原朱美

スタイリスト/大沼こずえ(KIND)
ヘアメイク/中原雅子
衣装:PIAZZA SEMPIONE(三喜商事)

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■MITSUKO公演情報

BUTAKOMEミュージカル「MITSUKO」 
~愛は国境を越えて~

※サンケイリビング「チケットファン」では4月2日(土)13時から発売します。
S席1万2000円→9800円で販売
※S席は全て1階席

【一般発売】 2010年3月25日(金)より発売
SS席15,000円 S席12,000円 A席9,000円 B席6,000円 C席3,000円(全席指定・税込)

■「MITSUKO」 公式HPはコチラから

※画像およびテキストの転載を禁止します。

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
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【Official blog】中井美穂(アメブロ公式)

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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
【Official Instagram】seinasagiri_official

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尾上松也さんSpecialインタビュー▷第二回『百傾繚乱』8月24日..

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1985 年生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。1990 年 5 月、「伽羅先代萩」の鶴千代役にて二代目 尾上松也を名のり初舞台。近年は立役として注目され、2015年より、次世代の歌舞伎界を担う花形俳優が顔を揃える「新春浅草歌舞伎」に出演し、「仮名手本忠臣蔵」早野勘平、「義経千本桜」狐忠信、「義経千本桜 吉野山」佐藤忠信 実は 源九郎狐などの大役を勤める。一方、2009 年からは歌舞伎自主公演 「挑む」を主宰している。

歌舞伎の以外でも、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2013)ベンヴォーリオ役、「エリザベート」(2015)ルイジ・ルキーニ役、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版のマウイ役、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)今川氏真役、初の主演ドラマ「さぼリーマン甘太朗」等、活躍の場を広げている。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト

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