演劇・ミュージカル

インタビュー

瀬奈じゅんさんSpecialインタビュー▷『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』~3人でヒロイン・アリソンの“今”を生き抜く~

2018/02/05


 

瀬奈じゅんFUNHOME003

 

女優としての新たな可能性への期待

 
――ジニーン・テソーリ(音楽)とリサ・クロン(脚本・歌詞)という女性チームが手掛けた楽曲はトニー賞に輝き、キャスト盤CDはグラミー賞候補にもなりました。実際にお稽古で歌ってみた感想は?
 
ほんといい曲ばかり。でも、すごく難しいです! 歌唱技術と感情表現のあんばいが課題で……。終盤の“Telephone Wire”とか、涙が出てきて歌えなくなるので、しっかりしないとなと(苦笑)。

 
――これまでも泣きながら演じた役はありましたか?
 
アンナ・カレーニナがそうでしたね。あと、エリザベートも。本作もそうですが、やはり死と向き合う作品はキツイです。誰もが死と隣り合わせなんだってことが分かる年になって、今もがいて生きている人なら、そう感じるものじゃないでしょうか。でも、涙が流れればそれだけ役に入り込めたか、っていう話ではなくて。涙が流れるか流れないかなんて関係なく、これまで演じてきたどの役にも心が揺さぶられてきました。

 
――演出の小川さんとは初顔合わせですね。
 
はい。正直アリソン役のお話をいただいた時、「宝塚の男役をやっていた私がこの役を演じて、本当にいいのか」という戸惑いが少しありました。でも、とにかく小川さんと仕事がしたかったので、勇気を出して役に飛び込みました。現場での小川さんは、とにかく頭が切れる! そうじゃないと演出家なんてできないとは思うんですけど(笑)。あと、サバサバしているけど、細やかな女性らしい部分も持ち合わせている。一緒にいて、とても心地いいんです。

 
――父親役の吉原光夫さんの印象はいかがでしょうか。
 
以前から拝見し、「すごく色気のある俳優さんだな」と思っていたんです。一見強面なので、よく知らないと、近寄りがたいと思う方がいるかもしれません。でも、そんなことは全然なくて。小川さんとはまた違った繊細さを持ち合わせた、素敵な方です。

この作品のテーマである“家族”は、光夫君演じるパパを軸に成り立っているので、その存在感たるやすごくて。例えば昨日、古いものやキレイなものが好きなパパが、リネンや銀食器をめでるシーンの稽古をしていたんですが、光夫君を見ているだけで涙が出てきてしまって。ちゃんとしなきゃって思うんですが、つい……ダメですね(笑)。

今はまだ、パパとアリソンさんとの距離感を測るのが、すごく難しい。近寄りがたい瞬間、近くにいても心が遠くに感じる瞬間、二人の心の距離がぐっと縮まる瞬間など、その時々を視覚的にも感情的にも明確に表現できたらなと思っています。

あと、いつも芝居をしながら考えていることなんですが、自分が「こういう役です」「こういう性格です」と演じるよりも、周りのキャラクターが会話や態度を通し、それを知らしめることのほうが効果的だなと。例えば『エリザベート』だったら、ルドルフがどんなふうに育ってきたかなど、みんなが散々話すわけじゃないですか。で、お客さんは十分情報をインプットされた状態で、ルドルフの登場を待つ。あの役はすごく得していますよね(笑)。そういうのが今回、ブルースに対してできるだろうと思っていて。私ならパパに対してどんどん疑問をぶつけていくことで、(紺野)まひるちゃん演じる母親ならパパと接したり、彼について語ったりする中で、ブルースが一体どんな人物なのかをお客さんに見せることができるはず。そうして浮かび上がった“人物像”に肉付けをするのが、光夫君。彼の力で、より深みのあるブルースが立ち上がることでしょう。光夫君一人ではなく、みんなでブルースという役を作り上げる。それが当たり前にできるカンパニーだと私は思っています。

 
――劇中のアリソンも瀬奈さんも同じ43歳。今、アリソンという役に出会えたことについて、どう感じていらっしゃいますか。
 
宝塚を退団後、歩き方一つにしても「女性らしくしなきゃ」と意識していた自分がいます。男役時代にしみついたものがあったのはもちろん、もともと男っぽいところがあるので、その“素”の部分をさらけ出してしまうことで女優として拒絶されるんじゃないか……そんな恐怖みたいなものがあったのかもしれません。でも、アリソン役を演じるにあたり彼女の写真を見せていただいたら、確信したんです。普通の女優さんなら違和感があるような仕草も、私なら難なくできちゃうなって。この役を通し、宝塚をやめて以降、封印してきた自分の“素”の部分を解き放つことができるんじゃないかなと。もちろん怖さもあります。でも、自分が女優として一皮むけるんじゃないかという期待のほうが大きいんです。

 

取材・文 / 演劇ライター・兵藤あおみ
撮影 / 吉原朱美

 

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ロサンゼルス生まれ。87年~95年、フジテレビアナウンサーとして活躍。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」などの番組で人気を集める。
現在、「鶴瓶のスジナシ」(CBC,TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)にレギュラー出演。97年から連続してメインキャスターを務めるTBS「世界陸上」をはじめスポーツ・情報・バラエティと幅広い分野のテレビ番組やCMに出演している。
演劇コラムの執筆や、クラシックコンサートにおける司会や朗読などでも活躍中。
2013年~読売演劇大賞選考委員を務める。
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長崎県佐世保市出身。2001年に87期生として宝塚歌劇団に入団。初舞台は『ベルサイユのばら2001』。 2014年に雪組トップスターに就任。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!』『るろうに剣心』『星逢一夜(ほしあいひとよ)』などで主演を務め、2017年7月『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)/Dramatic “S”!』で、宝塚歌劇団を退団。
退団後初のステージ『SECRET SPLENDOUR』も大好評を博し、2018年5~6月にミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演を務める。

【Official HP】https://seinasagiri.com/
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1985 年生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。1990 年 5 月、「伽羅先代萩」の鶴千代役にて二代目 尾上松也を名のり初舞台。近年は立役として注目され、2015年より、次世代の歌舞伎界を担う花形俳優が顔を揃える「新春浅草歌舞伎」に出演し、「仮名手本忠臣蔵」早野勘平、「義経千本桜」狐忠信、「義経千本桜 吉野山」佐藤忠信 実は 源九郎狐などの大役を勤める。一方、2009 年からは歌舞伎自主公演 「挑む」を主宰している。

歌舞伎の以外でも、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2013)ベンヴォーリオ役、「エリザベート」(2015)ルイジ・ルキーニ役、ディズニーアニメーション映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版のマウイ役、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)今川氏真役、初の主演ドラマ「さぼリーマン甘太朗」等、活躍の場を広げている。

【Official HP】 尾上松也公式ウェブサイト

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